2023年9月8日 ご飯のおいしさを表す言葉をリスト化 米飯の官能評価用語体系の構築を推進

農研機構と伊藤忠食糧株式会社は共同で、米飯の食味や食感を表す言葉を広く収集・整理し、約100語から成る用語リストを作成した。このリストは、様々な米飯の品質を詳細に評価する際や米の品種、炊飯方法などによるおいしさの違いを具体的に伝える際の参考資料として使うことができる。今後、辞書のように使える「米飯の表現体系」として展開される予定だ。

 

表現を体系化して品質評価に利用

近年、よりおいしいご飯を食べたいという消費者に応えるため、様々な特徴を持つおいしい米が次々に登場している。また、より自在に米の選択を行いたいとのニーズを受け、少量単位で購入できる商品も多く登場している。

一方、中食・外食消費の増加に伴い、業務用米飯の需要も高まっている。業務用米飯は、外食店での米飯、コンビニエンスストアなどで販売される弁当の米飯など、多岐にわたっている。

消費者は、炊飯前の米であれ、米飯であれ、食シーンに応じて様々に選択しており、着目される米飯の品質はより多様になっている。

米飯の品質を表す「ふっくら」、「もっちり」、「つぶだちがよい」、「甘みが強い」などの言葉は、販売、流通、加工、生産、品種育成に携わる多くの人々にとって重要となる。米や米飯の高品質化や付加価値向上のためには、「食べてどう感じるか」という視点が必要で、様々な現場で官能評価が行われている。その官能評価では、品質を表す言葉を適切に使う必要がある。

しかし、こうした言葉には曖昧さが伴い、現場によって、組織によって、人によって、使われ方が違うことがある。そのため、「限られた言葉しか使われずに詳細な品質が評価しきれていない」、「言葉の曖昧さが原因で評価の精度が低い」などの問題点が指摘されていた。

また、品質を伝える際にも、言葉は重要な役割を果たす。昨今、米や米飯の流通経路や販売形態は多岐にわたり、おいしさに関連する品質の情報を明瞭に伝える必要性はこれまで以上に高まっている。しかし、米飯の特徴を表す言葉の整理は行われていなかった。

さらに、従来の言葉では表現しづらい米飯が登場し、混乱が生じる場面も増えている。農研機構ではこれまで、食べ物の表現を体系化して品質評価に利用する取組を行ってきた。米飯についても、品質を表す言葉を整理して共通言語化すれば、精確な品質評価ツール、コミュニケーションツールになると考えられる。そこで今回、伊藤忠食糧株式会社と共同で、業務用も広く含めた米飯の用語体系の作成に着手した。

 

約100語から成る用語リスト

研究チームでは、米飯のおいしさに関連する用語体系の開発に取り組んでおり、稲、米、米飯に関係する多くの業界で共通に使うことができる初の用語体系を目指している。今回は、その最初の成果として、「米飯の官能評価用語リスト」を得ることができた。

用語リストは約100語から成り、外観/香り/味・フレーバー/テクスチャー(食感)に分けられている。類義語や反対語に関する情報も含んでいる。

リストにある用語は、熟練したパネルが実食して特徴を言葉にしたもの。また、米に関する多くの先行研究や書籍などからも表現を収集した。得られた約7000語の表現を集計、整理、統合して、最終的に約100語のリストにまとめている。

用語リストが対象としている米飯は「白米として食べる米」で、広範囲にわたる。用語を収集するための実食では、全流通量(2019年度)の約80%をカバーする品種の米を用い、さらにアミロース含有率が異なる様々な特徴をもつ品種の米も用いた。米飯としては、チルド米飯、常温米飯、保温した米飯、包装米飯などを対象としている。

用語リストを参照することで、米飯の官能評価の項目設定が効率的に行える。特に、米飯の詳細な品質や、新たに登場した品種の米の品質、新たなタイプの業務用米飯の品質について官能評価を設計するときに有効である。

用語リストによって米飯の品質要素が把握しやすくなるため、官能評価のパネルの訓練にも役立つ。これにより、官能評価の精度向上につながることが期待できる。

 

「用語リスト」から「用語体系」へ

研究グループは今後、それぞれの用語に定義と例示を付し、「用語リスト」から、辞書としても機能する「用語体系」へと展開させていく方針だ。

用語体系は、官能評価の高度化に寄与するだけでなく、米飯の品質情報の共有を促進する。これまで品種育成、栽培、流通、加工・調理、販売、消費など、各現場で、それぞれ使われていた言葉を共通言語化することで、米や米飯に関わるステークホルダー間のコミュニケーションを円滑にし、消費者の多彩なニーズへの対応に貢献すると期待されている。

用語体系は、完成後(2024年度以降)に農研機構のホームページなどで公開される予定だ。


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