2017年8月29日 がんの5年生存率65.2% がんセンター、5大がんの施設データを初公開

国立がん研究センターは9日、2008年にがんと診断された患者の5年生存率が65.2%だと発表した。データは、がん診療連携拠点病院など209施設で集計。このうち、要請に同意した188施設については、5大がんの施設ごとの生存率をホームページ上で公開している。

発表によると、2008年に対象の医療機関でがんと診断された人は21万4469人。項目は、性別、部位別、年齢別、病期(がんの進行状況)別などを集計した。性別では、男性が58%、女性が42%とやや男性の方が多く、診断時の年齢では男女とも70歳代が最も多くなっていた。

部位別でみると、5大がんは胃が70.4%、大腸が72.6%、肝臓が38.5%、肺が39.1%、乳房(女性のみ)が92.7%だった。そのほか、食道は43.4%、膵臓は9.9%、子宮頚部は75.6%、子宮体部は82.8%、前立腺は97.7%、膀胱は71.2%となっている。病期や年齢のデータとクロスさせてみると、女性の乳房については、1期と2期が多く、他の部位に比べ比較的若い世代が多くなっている。また、前立腺は生存率がほぼ100%で、病期別でも1期・2期・3期ともに代わらないのが特徴だ。

一方、公表した施設別の集計については、「それぞれの生存率が、直ちに施設の治療成績を示すわけではない」と指摘。生存率に大きく影響する患者の年齢や病期、治療方法にはバラつきがあるほか、都道府県によって集計の対象となる施設に偏りがあることから、施設間で単純に数字だけを比較することは難しいとしている。閲覧前には、患者の背景や施設の特性を理解しつつ、合わせて示している都道府県や施設のコメントも参照してほしいと要求。そのうえで、今回公表に至った理由については、「医療機関のがん診療の実態を把握し、医療の質向上の活動につなげること」だと説明している。

 

■ 高齢がん患者、「治療受けない」 他世代よりも高い割合に

がんセンターは、2015年に全国427施設でがんと診断された70万2866人のケースについても発表。データはがん医療の正確な把握のため、院内がん登録として2007年から毎年集計しているが、今回は特別に高齢者にスポットを当てて分析を行った。

その結果、高齢のがん患者は、部位や病期によるものの、若い年代の患者と比べて「治療なし」を選択する割合が高いことがわかった。2015年のステージ4の胃がんの場合、40歳から64歳で「治療なし」の割合は8.5%、65歳から74歳の割合は12.5%、75歳から84歳の割合は24.8%、85歳以上の割合は56.0%だった。

これについては、「高齢者への治療は科学的根拠が少なく、副作用への懸念が大きい。そのため、併存疾患の有無、全身状態、患者や家族の意向から、積極的な治療の実施を差し控える傾向が伺える」と推測。そのうえで、「患者の状態による個別性の考慮が必要。患者のライフステージに応じた最適な治療を探ることが重要」としている。


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