世界保健機構(WHO)は23日、2015年の世界のうつ病患者が推計で3億2200万人に上ったと発表した。2005年からの10年間で18.4%増加しており、WHOは国レベルの早急な対策が必要だとしている。
地域別の人口比率をみると、アジア・太平洋地域は約48%で、トップはインドの5667万5969人。次いで、中国の5481万5739人、インドネシアの916万2886人、バングラデシュの639万1760人、日本の505万8124人と続いている。
WHOによれば、うつ病は男性よりも女性の患者が約1.5倍多い。症状が重く、長期にわたる場合は、自殺につながる可能性を持ち、その人数は毎年世界でおよそ80万人といわれている自殺者の1.5%に上るといわれる。
■ 身体的健康への影響も
原因は、社会的や心理的、生物学的な様々な要因が、複雑に作用して生じる。特に失業や死別、心理的外傷を経験した人は発症する可能性が高い。リスクは身体的な健康にも関係しており、例えば心血管疾患を発症した人はうつ病になりやすく、逆にうつ病の人は心血管疾患になりやすいという。
■ 誤診されるケースも
治療には、抗うつ剤のほか、認知行動療法(CBT)や対人関係療法(IPT)といった方法がある。ただ、こうした治療法があるにも関わらず、資源や治療者の不足、精神障害に対する社会的な偏見などが障害となり、有効な治療を受けている人は全体の半数以下、多くの国では10%未満にとどまっている。さらに、うつ病は正しく診断されないことがあり、誤った診断にもとづいて抗うつ剤を処方されているケースなどもあるという。一方で、WHOは、治療者が適切なケア、心理社会的援助、薬物療法を組み合わせて行うことで、うつ病を含む数千万人の精神障害者が、資源が不足している場合でも正常な生活を送ることができると主張している。