農研機構とパソナ農援隊は6月19日、東京都千代田区のパソナグループ本部にて連携・協力に関する協定を締結した。この協定は、日本の地域農業を支える〝強い農業者〟の育成を目的としたもの。農業分野で高度な技術や新品種等の開発を行う農研機構と、農業分野での人材育成事業等を展開するパソナ農援隊が連携・協力することで、優れた栽培技術と経営感覚を持つ〝強い農業者〟が育成され、地域の活性化や国際競争力の強化等を通じて日本農業の発展に寄与していくことが期待されている。
今後の取り組みとしては、パソナ農援隊が主催する就農研修や農業技術講習で、農研機構の研究者が新技術や新商品を紹介することなどが考えられている。また、病害虫被害や適性品種の選定など、パソナ農援隊に寄せられる農業生産現場の様々な課題に対し、農研機構の研究者が解決策を提案していくとしている。さらに、パソナ農援隊が2016年にフランスのパリに開設した、日本の加工食品・農産品を紹介・販売する施設「Le Salon de Chef」を通じて、農研機構が育成した品種が海外に紹介される。
両者のこれまでの取り組みと今後の展開
農業者の高齢化や後継者不足が顕在化する中、農業経営を担う意欲のある農業者の育成は、日本農業の最大の課題となっている。こうした状況の中、農研機構では、新規就農者や新しい技術・知識を身に付けたいと考えている農業者に対し、技術講習や研修等を実施し、人材育成に取り組むとともに、地域農業を支える意欲ある農業者との連携を強化してきた。
一方、パソナ農援隊は、兵庫県淡路島に自社農場を有し、就農希望者を受け入れるなど人材育成の面で重要な役割を果たしている。さらに、新たな農業ビジネスの構築やサポートインフラの整備など、様々な農業者支援を実施している。
今回、農研機構とパソナ農援隊の協定が締結されたことにより、双方の持つ人材育成制度の相互連携が可能となり、就農予定者、農業者等からの多様な研修ニーズに対応できるようになることが期待される。また、相互の人材育成のためのネットワークを活用することにより、より多くの意欲ある農業者の育成が可能になることについても期待が集まっている。
両者は、今回の協定の締結を踏まえ、人材の育成を通じて農研機構の持つ高度な技術や最新の品種をいち早く農業生産現場に導入することにより、地域農業の活性化や日本農業の発展に寄与していきたいとの考えを明らかにしている。
フランス・パリに開設された「Le Salon de Chef」での取組
パソナ農援隊がフランスのパリでプロモーション活動を実施したことにより、日本の農業法人が生産した農研機構育成品種・寿司用米「笑みの絆」が、現地の鮨店で使用されることとなった。この事例のように、現地で高く評価されたことは、日本の農産物や農研機構の育成品種の商品価値と認知度を高めることにつながる。農研機構では、この事例を踏まえ、今後、パソナ農援隊との連携のもとで、世界に農研機構ブランドの品種情報を発信していくとしている。