常に当事者意識を持って業界に新しい価値を作っていく ― 。こうした旗印の元に集う介護支援専門員のコミュニティが、じわじわと拡大を続けている。「ケアマネジャーを紡ぐ会」だ。
■「仕事が楽しくなった」
居宅介護支援の事業所を経営していくにあたり、併設サービスに頼らない独立したスタイルで成り立たせることを1つの理念に掲げている。
制度改正のフォローやスキルの向上、キャリアアップなどを図るセミナーを精力的に開催。介護保険の給付のみに依存するのではなく、補完的な収入源を自ら作り出していく道にも大きな可能性があると睨み、学ぶ範囲も幅広く柔軟に設定している。一方、激務や孤立感といった日々の悩みを共有したり、モチベーションをキープしたりするためのサロンには、背伸びをしないほのぼのとした雰囲気が漂う。
「ケアマネはもう辞めようと思っていた」
大阪で支部長を担う進(すすむ)絵美さん(一般社団法人ケアマネ業務支援センター理事)はそう振り返る。「苦しい時に紡ぐ会と出会い、ケアマネはこうでなければいけないという意識を外してもらえた。その後は仕事がすごく楽しくなった」という。
■ 見切り発車で徐々に改善
現在、コロナ禍でセミナーやサロンは全てオンラインになった。遠く離れた地域のケアマネ同士が情報交換を行うなど、その利点を最大限に引き出して場を盛り上げている。ICTを使った取り組みは、緊急事態宣言が最初に発令された昨年4月からスタート。進さんは、「多くのケアマネが参加するオンラインセミナーは、おそらく私達が日本で一番早く実践した」と胸を張る。
草の根の活動だけあって手探りの面もあるが、それがかえって若いケアマネのリアルに響く。
Zoomで話を聞かせてくれた中心メンバーの1人は、「我々には『見切り発車力』がある」と表現した。「最初から高い完成度を出せるわけではないが、とりあえず実行に移している。まず始めてみて少しずつ改善していくスタイルでやってきた」。自分の現在地を積極的に肯定するマインドセットも前進を続ける一因だ。
■「生きる場所は自分で作る」
発足は2015年。これまで地道にコツコツ固めてきた土台を、ビデオ会議やウェビナーが常識に変わった機をうまく活かして広げていっている。
取り上げているテーマは、介護報酬改定やICTの活用、実地指導、ローカルルール、ストレス解消、働き方、将来像、ケアマネの社会的地位の向上など多岐にわたる。介護離職ゼロの実現に貢献していく観点から、民間資格「産業ケアマネ」の創設にも踏み切った。
埼玉支部長の松木哲也さん(株式会社C‘est La Vie代表取締役)は、「制度への愚痴を言っていても何も変わらない。生産性を徹底的に高め、質を落とさずに業務時間を大幅に減らすなど発想を変えていく。可能な範囲でダブルワークにも挑戦したい」と前を向く。「ケアマネのスキルは社会の中で幅広く役立てられるはず。自分の生きる場所は自分で作っていく」と意欲的だ。
■ 一緒に考えていくコミュニティ
参加している人の考え方は多様で、何か特別な決まりがあるわけではない。共通している点があるとすれば、他者とのコミュニケーションを通じて明日を良くするヒントを得ようと模索する姿勢だけだ。
千葉支部の佐藤寛子さん(株式会社ひろびろ代表取締役)は、「本当に色々なキャラクターの人がいる。ケアマネとして社会で活躍する機会をいかに広げていくか、ケアマネ同士で一緒に考えていくコミュニティになっていると思う」と説明。そのうえで以下のように呼びかけた。
「日々の業務で疲弊されている方などにもぜひ参加して頂きたい。自分の世界を少し広げるきっかけが見つかるかもしれません。参加してもし肌が合わなかったら、それはそれで構いませんので」