2023年1月13日 「CNFの安全性評価書」を公開 ―自主安全管理を支援、応用開発と普及を後押し―

「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」で、セルロースナノファイバー(CNF)の安全性評価に取り組んでいる国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、CNFの安全性に関するこれまでのNEDO事業の成果や取り組み状況、国内外の論文情報をとりまとめた『セルロースナノファイバーの安全性評価書』を公開した。

植物素材であるCNFは軽量、高強度、高弾性、低熱膨張率、透明性という特長を有する高性能素材。また、大気中の二酸化炭素を吸収・固定した木材などが原料であることから、カーボンリサイクルの一端を担う素材としても期待されている。

一方、新材料が社会で使われていくためには、安全性の確認が重要。安全性に関する情報がないことで、風評被害や他の材料との競争で不利になる可能性がある。特にナノ材料については、市場化にあたって安全性の確認を求める国際的な流れがある。

2020年3月にNEDOは、産総研などと共同で、「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発」において、CNFの検出・定量手法の開発、気管内投与手法の開発、皮膚透過性試験手法の開発、排出・暴露評価手法の開発を行い、その成果として、「セルロースナノファイバーの検出・定量の事例集」、「セルロースナノファイバーの有害性試験手順書」および「セルロースナノファイバー及びその応用製品の排出・暴露評価事例集」の3文書類を公開した。

これらの文書類では、3種のCNFを主対象とした安全性評価手法と評価結果がまとめられている。しかし、さらにCNFの応用開発や普及促進には、これまでに行われていない評価項目を含む多様なCNFに関する安全性評価の実施や国内外における最新の論文などの情報集約が求められていた。

評価書では第2章から第6章でヒト健康影響に関する情報として、動物試験や細胞試験の結果をまとめている。

第7章は、ヒト暴露に関する情報として、作業環境調査や模擬試験など、CNFの排出・暴露に関する評価事例を紹介し、注意すべきプロセス、対策と管理、計測法についてまとめている。

第8章と第9章は、環境影響に関連する情報として、それぞれ水生生物への影響と生分解性に関する知見をまとめている。

今後、産総研は、さらに多様なCNFに関して吸入影響や排出・暴露の評価を進めるとともに、情報が少ない中皮腫や生態影響の評価も進め、それらの評価結果を2024年度に成果文書としてまとめる予定。これにより、素材・消費財メーカーなどの適切な自主安全管理を支援し、CNFの応用開発と普及を後押しする。CNFの社会実装・市場拡大の早期実現により、二酸化炭素の排出量を削減し、エネルギー転換・脱炭素化社会の実現に貢献する。

 


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