国立がん研究センターは、「電子タバコによる禁煙効果は低い」という調査結果を明らかにした。これは、米国などの海外で分析・評価されている解析結果と一致しているという。
調査はインターネットを通じて2015年に実施。20歳から69歳で、過去5年間に紙巻きタバコをやめようと試みた798人について、禁煙の方法や成功者数、失敗者数を調べた。
それによると、電子タバコを使用した人の禁煙の成功率は、使わなかった人よりも38%少なかった。一方、禁煙外来を受診してニコチンを含まない薬の処方を受けた人は、受けていない人に比べて成功の確率が約2倍に上昇していた。
■「禁煙効果」の販売スタイルも是正すべき
結果を受けてがんセンターは、「禁煙効果がある」などと唄われている電子タバコについて、「製品説明の中に禁煙成功の効果を発揮するための用法、用量が示されていないものも多く、医療関係者からの指導や支援とも関わりがない。医療機関での禁煙外来の受診など、医学的に証明された禁煙方法と横並びに電子タバコを扱うことはできない」と指摘。そのうえで、国内の喫煙者減少に貢献する可能性は低く、禁煙の手段として推奨または促進すべきではないと分析した。さらに、電子たばこを禁煙目的の製品として販売する行為についても、適切な規制を設ける必要があるとしている。
電子タバコには、バッテリーに蓄えた電気で加熱して吸い込む形式のものの中でも、ニコチンを含まないタイプ、ニコチン入りのタイプ、たばこの葉を加熱する電気加熱式タイプがあり、法規制上の位置づけがそれぞれ異なる。
こうした電子タバコには、禁煙を奨励するだけで公衆衛生にプラスの影響を与えるとの見方がある一方で、より効果的な禁煙方法から喫煙者を惑わし・逸らして、結果的に社会へ悪影響を及ぼすという意見も存在。厚生労働省は、電子タバコの一部の製品は、健康への悪影響を及ぼす可能性が高いとしている。
禁煙治療の経済効率性などは、数ある保健医療サービスの中でも費用対効果に特に優れていることが科学的に証明済みだ。日本では2006年度から禁煙治療への保険適用が始まり、中央社会保険医療協議会の検証結果では、禁煙治療終了9ヵ月後の禁煙継続率が約3割(5回受診完了者では約5割)と、国際的にみて高い成績であることが報告されている。保険適用は、2016年度に未成年者や若年喫煙者へも適用を拡大している。