経済産業省と一般社団法人日本機械工業連合会は、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省との共催により「第11回ロボット大賞」を実施し、9月11日に各賞の受賞ロボット等を決定した。9月18日に「Japan Robot Week 2024」(主催:一般社団法人日本ロボット新聞社、株式会社日刊工業新聞社)の会場内で、表彰式と受賞ロボット等の展示を行う。
「ロボット大賞」は、我が国のロボット技術の発展や社会実装を促進することを目的に、ロボットの先進的な活用や研究開発、人材育成といった様々な分野において、優れた取組を実施した企業等を表彰する制度。
2006年に第1回を開催し、2008年度からは隔年での開催を続け、今回が11回目の開催となる。
今年2月19日から4月12日までの募集期間に寄せられた全85件の応募の中から、第11回ロボット大賞審査特別委員会(委員長:川村貞夫立命館大学 立命館グローバル・イノベーション研究機構 機構長代理 特別招聘研究教授)などの審査により、各省の表彰対象を決定した。
このうち経済産業大臣賞はファナック株式会社の「世界最小の大型加工機 高精度本格加工ロボットM‐800」、中小企業庁長官賞(中小・ベンチャー企業賞)は株式会社ハーモテックの「KUMADE‐FORC(ECシリーズ)」に決定した。
経済産業大臣賞
名称:世界最小の大型加工機 高精度本格加工ロボット M‐800
受賞者:ファナック株式会社
概要:従来の加工機では困難だった高精度な加工を実現する高精度6軸多関節ロボット。60kgの可搬重量ながら、大きな加工反力に耐える高剛性アームを搭載し、高い軌跡精度を実現。高精度キャリブレーション技術により、アーム誤差を補正し、±0.1mm以下の絶対精度を達成。高精度なレーザ切断やウォータジェット加工に加え、加工反力を受けても高い精度を維持できるため、切削加工、面加工、穴あけなどの本格加工が可能。小さい設置面積で広い動作範囲を持ち、様々な方向からの加工ができるため、経済的かつコンパクトな設備を提供する。自動車や航空機の部品加工に適用が進んでおり、厳しい環境下でも長期間の安定稼働を実現している。
評価のポイント:世界でもトップクラスの技術で実現された高剛性、極めて高い絶対位置精度、大きな加工反力を受けながら高い精度での動作が可能という特徴を有している。これまでのロボットでは不可能であった様々な加工作業を可能とし、自動車産業、航空機産業等での利用が始まっている。その省スペース効果、低コスト化は絶大であり、今後益々の利用が見込まれると共に、本ロボットで導入された技術の横展開も大いに期待できる。
中小企業庁長官賞(中小・ベンチャー企業賞)
名称:KUMADE‐FORK(ECシリーズ)
受賞者:株式会社ハーモテック
概要:ベルヌーイ方式やエジェクターを複合的に利用し、広範囲に負圧を発生させることで、脆弱な極薄ウェハを優しく搬送する技術。特にパワーデバイス製造分野で高く評価され、大手企業にも採用されている。新型ECシリーズは、ウェハの反りや撓みを考慮して非接触搬送が可能。カーボンニュートラルや脱炭素社会の実現に向けて、次世代パワー半導体の製造に対応し、消耗部品がなくランニングコストがかからない。さらに、半導体産業以外の分野への応用も視野に入れている。食品業界などでも、脆弱な製品の傷つけない搬送が実証されており、今後の自動化分野での利用が期待される。
評価のポイント:これまで搬送が難しかった薄く大型のウェハを、接触せずに吸引固定し、さらに裏返すことができる技術は他に例を見ない技術。国の流通特許事業で、使われていなかった特許を引き受け、実用化した。半導体製造は、AI等の半導体チップのニーズから今後の市場拡大の期待が大きい。応募者独自の技術であり、また、産業分野としても今後に大きく波及効果の高い技術である。