2024年5月7日 「研究医」枠増員・強化へ 今後の医学教育あり方会議で議論 海外研修の機会や海外研修義務化など

先進医療を推し進める人材を養成するために、多くの医科大学・学部で設定されている「研究医」枠。今後の医学教育のあり方を議論している文部科学省の有識者会議は、医学研究の充実や大学・大学病院の魅力向上に向けて同制度のあり方を検討している。先月に開催された会合で示された論点案では、研究医を増員する方策などを打ち出すことや、研究医枠設置大学に対して、「学生の卒後のポストを含めたキャリア支援や海外研修の機会提供などの義務付け」などを行う方向性が示されている。同会議では今後4月と5月にそれぞれ会合を重ねて、取りまとめを行う見込み。

昭和57年と平成9年の閣議決定に基づき、医師過剰の懸念から医学部定員の抑制が行われるなか、平成22年度に「経済財政改革の基本方針2009」を踏まえ、地域枠、研究医枠、歯学部振替枠により臨時的な定員増が始まった。

このうち、研究医枠は、他大学と連携し、基礎医学や社会医学に関する優れた研究者の養成を重点的に担おうとする場合に限り、3名以内の定員増を認めるもの。当該定員を入試制度に紐づける必要はないが、設置大学は研究医の養成拠点として、複数の大学と連携の上、研究医養成のための充実した教育体制を整備することが求められる。

必須条件としては、「複数大学の連携により研究医要請拠点を形成する」ことをはじめ、「学部・大学院で一貫した特別な教育コースを設ける」「研究医確保のための奨学金を設ける」ことがある。

また、要件として課すことが望ましい任意要件としては、専門の入試枠を設け、研究意欲の高い学生の選抜を行うことや、学生の研究活動実施のための予算措置を行うこと、学会や論文発表の指導や機械の提供を行うことなどを列挙。さらに、臨床研修により研究活動が中断されないための配慮や、研究医として常勤ポストを設けること、海外研修の機会が提供されることも、任意要件としている。

研究医枠学生数は、平成22年度の制度発足時17人。以降増加傾向を続け、平成27年度から31年度には40人にまで増えたが、令和2年度以降は減少し、ここ数年は27人に留まっている。

また、医学部を置く81大学の半数以上の大学で研究医養成コースを置いているが、コース在籍者の考え方は大学によってさまざま。研究医養成のために実施している取り組みとしては、77.8%で行われている「大学院の早期修了」が最多であるが、「大学院の単位の事前取得」「MD‐PhDコース」といった学部・大学院一貫の取り組みも進められている。さらに、奨学金や入学金・学費の免除など金銭的支援も多くの大学で取り組んでいる。

 

大学病院が連携して研修推進

会議では、医学生の研究マインドの涵養に一定の効果があると考えられる研究医枠について、「より教育効果の向上を図るため、研究医枠にかかる要件の見直し、教育内容の充実にかかる方策」を講じる方向性が示された。具体的には、必須要件として、卒後のポストを含めたキャリア支援や海外研修の機会の提供などを義務付ける方向で議論を進めることとしている。

また、研究医枠の本来的な目的に鑑み、基礎医学や社会医学での素養を培った優れた研究医、臨床医を幅広い大学で養成するために、「設置大学の見直しを含めて、研究医を増員する方策」に関しても検討する。ここ数年増員されていない研究医枠に関して、研究医養成の重要性に鑑み、令和6年度設置大学を含めて、各大学の研究医養成のための教育体制、研究医輩出の状況を勘案。医学部定員全体の方向性を踏まえつつ、研究者養成に特化した枠の設置促進、その範囲内で研究医を増員する方策のあり方を探る。

さらに、「医師としての臨床能力の向上、わが国医学研究力の向上のために、大学・大学病院に医師をはじめとした医療関係職種、異分野の研究者、研究支援人材等を確保するために考えられる方策」も論点として提示。高度で専門的な医療と地域医療の双方を経験できる大学病院と協力型臨床研修病院のいわゆるたすきがけ型の研修を推進し、臨床研修の充実を図ることを、進むべきベクトルのひとつとして示している。

また、臨床研修や専門研修と両立して大学院進学が可能なプログラムの履修者増の方策を講じるとともに、大学院進学、博士号取得に関するインセンティブといったことも、論点として掲げている。

 

研究医養成コースの取組例(学部・大学院で一貫した取組)


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