2022年10月7日 「温室効果ガス簡易算定シート試行版」策定 農産物の脱炭素の「見える化」で取組を促進

農林水産省では、フードサプライチェーンにおける脱炭素化を推進するため、農産物の生産段階における温室効果ガスを算定できる「温室効果ガス算定簡易シート(試行版)」を作成した。

「みどりの食料システム戦略」が目指す持続可能な食料システムを構築するためには、フードサプライチェーン全体で脱炭素化を推進するとともに、その取組を可視化し、気候変動対策への資金循環や持続可能な消費行動を促すことが求められる。

農林水産省では、令和2年度から「フードサプライチェーンにおける脱炭素化の実践とその可視化の在り方検討会」を開催し、生産段階の温室効果ガスを算定できる「温室効果ガス算定シート」の検討を行ってきた。今回、そのシートを試行版として、関心のある生産者や地方自治体、民間企業等が広く利用できるようにした。利用希望者は、農林水産省ウェブサイトでの登録が必要となる。

また、先行して行われたシートによる算定結果を利用し、温室効果ガス削減効果を「見える化」した農産物の実証販売が行われる。

 

簡易算定シートのポイント

簡易算定シートでは、生産者が生産段階で実際に使用する農薬・肥料等の資材投入量や、農業機械や施設暖房等のエネルギー投入量等を入力することで、温室効果ガス排出量が算定できる。

また、地域の慣行農法を想定して算定した排出量(標準値(都道府県別または地域別))と比較して、削減量や削減率を算出できる。

現在の対象品目は米、トマト(露地・施設)、キュウリ(露地・施設)の3品目だが、今後、対象品目が拡大されていく予定だ。

さらに、分解しにくい形態の炭素を長期間地中に貯留する技術であるバイオ炭の農地施用や水田からのメタン排出を削減する栽培技術である中干し期間の延長による温室効果ガスの削減効果を反映することが可能となっている。

 

温室効果ガス削減・生産現場の努力の例

【水田の効果的な水管理(中干し延長)】

水田土壌内にはメタン生成菌が存在し、嫌気条件下で稲わらなどの有機物をエサに温室効果ガスであるメタンを発生させる。「中干し」は、イネの生育調整を目的として一時的に水田から水を抜く従来からの水管理技術で、中干し期間を通常よりも延長することで土壌中により多くの酸素を供給するとメタン生成菌の活動が抑制されるため、メタン排出量が低減される。水田に水を溜めることと抜くことを繰り返す「間断灌漑」と組み合わせることで、より効果的にメタン発生量の削減が可能になる。

【バイオ炭施用】

「バイオ炭」は、木炭や竹炭、鶏ふん炭などの有機物(バイオマス)を原料とした固形の炭。2019年に改良されたIPCCガイドラインでは、「燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350度超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物」と定義されており、このバイオ炭を農地に撒くことで、分解されにくい状態の炭素を長期間にわたって土の中に貯めることができる。

【栽培期間中減化学農薬減化学肥料】

化学農薬や化学肥料を工業的に生産するためには、化石燃料を使用する。これらを削減すると、生産にかかる温室効果ガスの排出を削減できる。

【暖房等での化石燃料の使用削減】

施設栽培の温室効果ガス排出量は、冬期の燃料利用に使う重油や電力に起因するものが多くを占める。化石燃料等の代わりに木質バイオマスチップを活用したり、栽培の工夫で冬期の暖房利用を減らすと大幅に温室効果ガスが削減できる。

 


農産物の温室効果ガス簡易算定シートの概要(農林水産省プレスリリースより)


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