YouTubeで摂食障害に関連するワードを検索すると、心の健康に関する相談窓口を案内する「精神的危機に関する情報パネル」において「摂食障害相談ほっとライン」の案内が検索結果の上部に表示されるようになった。これにより、摂食障害相談ほっとラインの活動が広く周知されることが期待される。
いわゆる拒食症・過食症といった摂食障害は、若い女性が罹患しやすい傾向はあるが、年齢、性別を問わず誰でもかかりうる疾患。死亡率は約5%で、精神疾患の中では最も高い群に分類されている。国内での患者数は24万人と推定されているが、患者の4割は医療機関に受診していないという欧米の調査結果もある。摂食障害に悩む人々へ、適切な情報発信や相談窓口へ導くことが課題となっている。
SNSの普及に伴い、世界的に若い世代では、動画を利用した情報検索が一般的になっている。動画は、テキスト情報よりも視覚的にわかりやすく情報を得ることができるため、特に若者に好まれている。摂食障害に悩む患者も、動画から多くの情報を得ていると考えられており、動画による情報収集の影響は功罪両面あるとされている。適切な情報収集やサポートにつながる手段として期待できる一方、不適切な情報に触れて摂食障害の発症や悪化のきっかけになる危険性も指摘されている。
今回、YouTubeで拒食症、過食症、過食嘔吐、チューブ吐きなど摂食障害関連ワードで検索をすると、心の健康に関する相談窓口を案内する「精神的危機に関する情報パネル」として摂食障害相談ほっとラインの案内が検索結果の上部に表示されるようになった。
YouTubeの「精神的危機に関する情報パネル」とは、自殺や自傷行為に関連するトピックの動画を視聴する際、また特定の健康危機や精神的苦痛に関連するトピックを検索した際に、危機的対応関連のサービスを提供する一般に認知された機関サポートが表示され、それらにアクセスできるようにするサービス。
同パネルは米国、英国、フランス、インド、韓国などでも実装されており、日本では今年3月末から随時掲載されている。また、今後パネルは検索結果上部に加え、各摂食障害に関する動画の下にも順次掲載される予定。
摂食障害相談ほっとラインは全国の患者とその家族を支援している。YouTubeによる啓発活動により、摂食障害相談ほっとラインの活動が広く周知されることが期待される。
3月のアクセス、過去1年を上回る
このサービスは今年3月末から開始され、同年3月のHPアクセス数は5262件、相談件数は74件だった。過去1年のそれぞれの月間平均値であるアクセス数4010件、相談件数67件を上回った。
摂食障害は、拒食・下剤乱用・過食後の嘔吐など体重を減少させる行動が意図的に持続することに特徴づけられる疾患で、患者の自己評価は体型や体重に大きく影響を受ける。年齢と身長から期待される体重の正常の下限を下回る痩せをきたす神経性やせ症/神経性無食欲症と、基本的に標準体重の範疇にある神経性過食症/神経性大食症が摂食障害の中心概念となっている。
摂食障害は、難治性疾患で、専門的な治療を受けられる医療機関が限られている。厚生労働省・摂食障害治療支援センター設置運営事業により2014年から無料で医療機関を案内したり、対応相談を受けたりする施設として「摂食障害支援拠点病院」が宮城県、千葉県、石川県、静岡県、福岡県の5県に設置された。
「相談ほっとライン」は5県以外の当事者・家族・医療機関・学校関係者などの相談に対応できるよう、2022年1月に国立精神・神経医療研究センター(NCNP)摂食障害全国支援センターが国立国際医療研究センター(NCGM)国府台病院心療内科(診療科長:河合啓介)に委託し、開設・運営している。また、TwitterなどSNSを使用して情報発信を行っている。