2017年11月7日 「心不全」、病名知っていても症状知らず 治療に関する知識、3人に1人がゼロ

循環器病研究振興財団は10月31日、「心不全」に関する調査結果を公表した。「病名を知っている」と答えた人は全体の97.7%。60歳代では男女とも100%にのぼった。それに対し、「病状や内容まで理解している」と答えた人は27.3%にとどまっていた。

調査は9月21日から25日にかけて、インターネットを通じて20歳代から60歳代の男女500人ずつ、計1000人を対象に行った。

それによると、「心不全」について、「症状・内容とも知っている」と答えた人は273人、「名称のみ知っている」は704人、「名前も知らない」は23人だった。「心不全」は、死因として明記されることも多いことから「心臓停止で最期を迎えた状況」と誤解されやすく、予防や治療による症状の改善が可能であることなどが伝わっていないとされている。

実際、症状へのイメージを尋ねた(複数回答)ところ、「症状・内容とも知っている」という人の53.8%は、「心不全にかかったらすぐに死につながる病気である」と回答。さらに、53.1%は「『心不全』は心臓の病気の総称である」、51.6%は「『心不全』は人間が死亡したときの診断名を指す」と答えていた。

治療に関する10の質問をしたところ、「『心不全』であっても適度な運動は有効である」や「『心不全』は悪化すると心臓の機能を回復することが出来ず、最終的には心臓移植が必要になる」、「『心不全』の治療には安静や食事療法が効果的である」といった具体的な知識を持つ人は、全体の約2割にとどまった。また、この質問で知識が全くなかった人は32.2%にのぼっている。

同研究振興財団の北村惣一郎理事長は、「団塊の世代が75歳以上になる2025年には、『心不全』の患者は120万人に増えることが予想される。そのため、患者予備軍はもちろん、健康を自負している高齢者も含めて『心不全』へ正確な知識を持つ必要性が高まっている」と指摘。早期発見することによって、状態の悪化するスピードを遅らせることや、発症後のQOLを維持することが可能になるとした。そのため、血液検査で心臓に負荷がかかったり、心筋が肥大したりするのを抑えるBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の値を調べることが重要だとしている。

 

■ 心不全の新定義を発表

一方、日本循環器学会と日本心不全学会は、31日に「心不全」の新たな定義を「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と発表した。心臓が様々な原因で血液を送り出す機能が弱まり、運動時の息切れや両足にむくみなどの症状が出ると説明。適切な治療で一旦改善することはあるものの、完治することはなく、過労や風邪、ストレスなどで症状がぶり返すこともあるとしている。発症後の生存率には個人差があり、1年以内に生命を落とす人から、何十年と普通の生活を送る人まで様々だ。ただし、心不全で入院した人は、5年の間に平均で半数が死亡する。これは、大腸がんとほぼ同じ割合にあたるという。


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