2016年8月4日 「太っていなくても生活習慣病」 順天堂大研究グループが『特徴』を解明

順天堂大学大学院医学研究科の田村好史准教授らの研究グループは、わが国をはじめアジア人に極めて多い、〝太っていなくても生活習慣病(代謝異常)になる人〟の特徴として、「骨格筋の質の低下」(インスリン抵抗性)を指摘する研究成果を世界で初めて発表した。血糖を下げるホルモンであるインスリンの感受性が低下して効きにくい状態である「インスリン抵抗性」と生活習慣病に関して以前から指摘があったが、インスリン抵抗性は体力低下や生活活動量の減少からもたらすことを解明した。

生活習慣病に関する研究はこれまで主に肥満者を対象に行われてきており、非肥満者における詳細な病態は現在まで十分に解明されてこなかった。この研究成果は、非肥満者の代謝異常予防を目指す上で、骨格筋インスリン抵抗性の改善が重要であることを示唆しており、順天堂大では、「わが国の予防医学を推進する上でも、極めて有益な情報」としている。この研究成果は米国内分泌学会雑誌のオンライン版で公開された。

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世界的にBMIが「1㎡あたり25kg満」であれば正常とされているが、アジア人は「1㎡あたり23kg」を超えると、非肥満者であっても代謝異常が出現しやすくなることがわかっている。そこで、BMIが「1㎡あたり23~25kg」で、高血糖、脂質異常症、高血圧といった心血管代謝リスク因子を持っていない者、一つ持っている者各28名、二つ以上持っている者14名の計70名の日本人を対象に調査を行った。

このほかに、BMIが「1㎡あたり21~23kg」で、心血管代謝リスク因子を持たない者24名(正常群)、肥満(BMIが25~27.5kg国内基準))でメタボリックシンドロームを合併する者14名(肥満MS群)の測定も実施した。いずれの群もすでに糖尿病や心血管疾患を患った人は除外した。

調査の結果、BMIが「23~25kg」で心血管代謝リスク因子を持っていない人は、正常群と同等のインスリン感受性だったが、心血管代謝リスク因子を一つでも持っていると骨格筋のインスリン抵抗性を認め、そのレベルは肥満MS群と同等だった。一方、肝臓でのインスリン抵抗性にはこのような関係は認められなかった。

また、どのような因子が骨格筋のインスリン抵抗性と関連しているかを調査したところ、従来肥満者で指摘されてきたような内臓脂肪が多いことや、脂肪肝や脂肪筋を減らすホルモンの濃度が低いことに加えて、体力や生活活動量が低い、脂肪摂取量が多いなどの生活習慣に関連した因子も挙げられた。

さらに、脂肪肝と判定されないような肝脂肪の軽度蓄積や正常範囲内での肝機能検査の軽度上昇であっても、骨格筋インスリン抵抗性と有意に関連する因子であることが明らかとなった。

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今回の調査から、日本人で太っていなくても心血管代謝リスクを合併する人では、骨格筋インスリン抵抗性が病態として重要である可能性が明らかとなった。骨格筋インスリン抵抗性に関連する因子として、従来から言われている内臓脂肪の蓄積のほかにも、体力の低下、生活活動量の低下、高脂肪食などが浮かび上がってきた。これにより、太っていなくても代謝異常を来しやすい人では、減量のほかにも、それらの生活習慣に特に注意を払う必要性が考えられる。

運動に限って言えば、現在ガイドラインでも推奨されている通り、普段歩く量(生活活動量)を増やすとともに、ジョギングといった体力が向上するような取り組みをすることが勧められるという。ただし、これらの因果関係の詳細は不明な部分もあるため、今後は介入研究を通した検証が必要。

また、今回の研究成果は、脂肪肝や今まで無視されてきたような軽度の肝機能異常は骨格筋のインスリン抵抗性を知る簡便なマーカーとして有用と考えられ、今後、健康診断をはじめとした予防医学での活用が期待される。


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