大阪市立大学の研究グループは、日本食が〝健康に良い〟ということを科学的に立証した。同大健康科学イノベーションセンターの渡邊恭良所長らが、『日本食によるストレス・脳機能改善効果の解明』を課題とする研究を実施。主観的疲労感や自律神経機能の側面から、日本食の「抗疲労効果」を明らかにしたという。渡邊所長らは研究成果をもとにした『レシピ本』を作成。最新の抗疲労研究成果に裏打ちされた〝和〟の簡単レシピが掲載されたもので、9月初旬に丸善出版(株)から発刊される。
国民の4割が苦しむ「疲労」
半年以上持続する疲労で苦しんでいる者の割合が日本国民の40%近く存在するにも関わらず、「疲労」に対する本格的な取組みや研究は少ない。しかし、医院やクリニックを訪れる人に最も多い訴えは「痛み」であるが、その次が僅差で「疲労・倦怠」。日常生活でのさまざまな、そして、多量のストレスにさらされて疲弊し、病気になったり、病気の手前の状態(未病)であることが多いともいわれている。
「疲労」により作業や運動の効率が下がり、日常生活でもつらい面が多いことは、誰もが経験しており、より良い疲労回復方法や過労予防法を探ることは、社会的・医学的に重要な課題といえる。
そこで、大阪市立大は多くの疲労回復研究を展開。その結果、「疲労」は重要な細胞の部品が錆び付いたり壊れたりしたもので、錆び付きを防いだり、錆び付いた部品の修復、あるいは、新しい部品を作って入れ替える、などの措置が必要という結論に至った。
この際に、もちろん抗酸化作用を持つものを摂ることも重要。炭水化物や脂質、タンパク質などのいわゆる部品・エネルギー原料のほかに、ビタミンやミネラルなど、細胞のなかで壊れた部品を修復したり、修理工場へ運んだり新品を作ったり、というたくさんのエネルギーの要る事柄を効率よく行うことが必須で、通常の食べ物から、もう少しそのような考えを入れた食材を摂ることにより達成可能と考えられる根拠を得たという。
さらに、毎日の生活のなかで疲れが取れやすく、かつ、疲れにくいということに特化したレシピがあれば活用できると考え、抗疲労食の研究に着手した。
文化遺産登録契機に進む和食研究
「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されたことを受け、農水省では、『医学・栄養学との連携による日本食の評価』という研究戦略を2014年度に策定し、全国規模での研究を開始した。
渡邊所長らの研究もこうした取り組みの一環として行われたもので、20代から60代までの1000名を対象に調査を実施。アンケートをもとに調理した一般的な食事と抗疲労日本食の摂取試験の結果、抗疲労日本食を摂取することで、疲労感の軽減効果や安静時の自立心家に機能の改善、さらに一部の血液中成分に改善効果が得られることが明らかとなった。
宅配食材の開発など事業化目指す
渡邉所長ら研究グループでは、2011年7月にも抗疲労食に関するレシピ本を発行し、好評を博している。今回第2弾となるレシピ本では、大阪北新地の割烹料理店「粋餐 石和川(すいさん いわかわ)」の浦上 浩店主考案の抗疲労日本食メニュー82種を載せている。
また、渡邊所長が副プログラムディレクターを務め、大阪市立大も参画するJST支援事業「健康〝生き生き〟羅針盤リサーチコンプレックス」では、このレシピを応用した冷凍食品や宅配食材の開発など、抗疲労食の普及・事業化を進めることとしている。