2016年10月11日 「受動喫煙と肺がんリスクの関連性は明確」 がんセンター、JTの見解に反論

国立がん研究センターは28日、受動喫煙と肺がんリスクの関連性について、同センターが示した研究内容を「科学的に結論づけられていない」とした日本たばこ産業(JT)の見解に対し、「関連性は明確に示されている。受動喫煙は『気配り・思いやり』や『迷惑』ではなく、健康被害の問題だ」と反論した。

問題の発端となったのは、がんセンターが8月30日に発表した「受動喫煙によって日本人の肺がんリスクは約1.3倍に高まる」という研究結果。研究では、複数の論文を統合して解析する「メタアナリシス」という手法を使用し、これまで「ほぼ確実」としていたリスク評価を「確実」に引き上げた。

 

■「リスクは受動喫煙だけでない」

一方、JTは翌日の31日にがんセンターの発表について、「肺がんのリスク要因は、受動喫煙だけでない」と指摘。「対象となった論文の条件が異なることなどから、リスクと喫煙の因果関係を結論付けていない」とするコメントを発表していた。

これに対し、がんセンターは、前回の発表の科学的アプローチをもとに、複数の論文を用いて、JTの見解に反論した。

具体的には、今回の取り組みによって、受動喫煙の肺がんリスクが少なく見積もっても1.1倍であることが研究間で矛盾なく説明されていると説明。また、研究で使われた複数の論文を統合・解析する「メタアナリシス」については、「対象者の偏りや不足、調整不足などで研究の結果は不安定なものになる。だが、複数の研究を統合することでより確かな結果が得られるため、『メタアナリシス』は、医学研究の中で最も信頼度が高いもののひとつとして位置づけられている」としている。

対象となった研究の条件が違うという指摘には、「研究時期や条件が異なる複数の研究で、1件を除いてすべて受動喫煙と肺がんとの関連を示す結果が得られており、このことがむしろ、受動喫煙と肺がんとの関連の確かさを示している」とした。

また、「受動喫煙のリスクは、科学的に結論付けられていない」という意見については、国際的なたばこ企業であるフィリップモリスインターナショナル社やブリティッシュアメリカンタバコ社が認め、健康被害や公共の場での規制を支持していることを紹介した。

 

■ 受動喫煙は「迷惑」や「気配り」ではなく「健康問題」

さらに、「受動喫煙は、周囲の方々、特にたばこを吸われない方々にとっては迷惑なものとなることがあることから、JTは、周囲の方々への気配り、思いやりを示していただけるよう、たばこを吸われる方々にお願いしています」というコメントに対しては、「受動喫煙は『迷惑』や『気配り・思いやり』の問題ではなく、『健康被害』や『他者危害』の問題だ」と批判。「科学的事実にもとづいて、公共の場および職場での喫煙を法律で規制するなど、たばこ規制枠組み条約で推奨されている受動喫煙防止策を実施する必要がある」と主張した。


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