2016年6月14日 「不満」を研究用データとして活用 情報研、データセットを研究機関に無償提供

大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立情報学研究所(NII、喜連川 優所長、東京都千代田区)は、(株)不満買取センター(FKC、中島正成代表取締役社長、東京都新宿区)とともに、研究コミュニティーへの研究用データセット提供を開始した。FKCが運営しているサービス「不満買取センター」で買い取られた〝不満〟と投稿者のデータを「不満調査データセット」として、大学や研究機関といった研究コミュニティーに無償提供する。

 

買い取った〝不満〟400万件以上

今回、NIIとともに事業を展開する不満買取センター(KFC)は、世の中の〝不満〟を買い取り、集まった〝不満〟を解析した後で企業等に届ける事業を展開している。これまで買い取られた〝不満〟の総数は400万件以上にのぼり、累計会員登録者は30万人以上。昨年秋には京都大との間で、企業向けマーケティング支援サービスの共同研究を開始した。

今回提供するデータは、昨年3月18日から同8月31日までに投稿されたデータのうち、FKCによる解析が完了している〝不満〟約25万件と、これらの不満を投稿したユーザー約2万人分のプロフィール情報。データに含まれるのはFKCで会員が閲覧できる情報で、特定の企業や個人につながる情報や投稿者を特定できるような個人情報は一切含んでいない。「不満調査データセット」は、NIIのデータセット共同利用研究開発センター(センター長:大山 敬三コンテンツ科学研究系教授)の情報学研究データリポジトリ(IDR)を通じて提供される。

 

自由な発想での研究へ プラットフォームを構築

NIIでは平成22年(2010年)にIDRを設置し、さまざまな企業や機関が保有する各種のデータセットを受け入れて、情報学分野の研究コミュニティーに提供を行ってきた。昨年4月には、情報学研究に有用なデータセットを整備して研究者に提供するとともに、データセットの構築と、活用基盤に関する研究開発を行うデータセット共同利用研究開発センターを新設。研究コミュニティーへのビッグデータの提供をさらに強化するとともに、大規模な実データと最先端情報技術を活用したデータサイエンス研究の加速に取り組んできた。FKCはNIIのこうした取り組みに賛同し、NIIを通じてデータを公開することにした。

NIIでは、今後もデータセットの拡充とデータセット共同利用の深化のための研究開発に取り組み、より多くの研究者が自由な発想で研究に利用できるようにするためのシステムプラットフォームの構築を進めていく方針。また、FKCは今回のデータ提供により、人工知能や自然言語処理の研究の発展に貢献する意向。また、不満意見を利用したデータドリブン(効果測定などで得られたデータをもとに、次のアクションを起こしていくこと)な意思決定による〝不満のない社会〟の創出を期待している。

5月27日・28日開催の「情報研オープンハウス2016」では、「不満調査データセット」などIDRから提供されるデータセットに関する展示が行われた。


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