2023年9月20日 「ため池デジタルプラットフォーム」を構築 管理状況を集約・共有、経年変化の把握を容易に

農研機構は、ため池の平常時の写真や日常点検結果、監視カメラの画像、水位データなどのため池の管理状況に関する各種の情報を格納し、閲覧できる「ため池デジタルプラットフォーム(ため池DP)」を構築した。日本全国の約15万のため池の情報が格納可能であり、国や地方自治体のため池管理担当者を対象ユーザーとしている。

ため池DPに格納されたため池の管理状況のデータは、ユーザー間で共有できる。平常時において、蓄積されたため池の写真や日常点検結果を比較することで、ため池の経年変化が把握できる。また、ため池の写真を格納することにより、ため池が被災した際に、その前後のため池の写真を比較することで被災状況を迅速に把握することができる。

さらに、ネットワークを介してため池DPに監視カメラや水位計を接続することで遠隔監視が可能となることから、ため池の状況をリアルタイムで確認できる。

 

DX化の推進で労力軽減、効率的な維持管理が可能に

豪雨・地震時のため池の危険度を予測し、現地の被災情報を共有する「ため池防災支援システム」は、農研機構によって開発され、現在、農林水産省で運営されている。豪雨・地震時に被災したため池の状況を情報共有することで、防災・減災に活用されている。点検時の写真の管理や日常点検の保管などの日常的な管理についても、DX化が進むことで、都道府県や市町村のため池担当者、ため池管理者の労力が軽減され、効率的な維持管理を行うことが可能となる。

農研機構は今回、日常的な管理データのデジタル化を目的に、これまでのため池の写真や日常点検結果をデジタルデータとして集約化するとともに、監視カメラや水位計によってため池の状態の変化を一つのシステム内で監視することができる「ため池DP」を開発した。このプラットフォームは、ユーザーが容易に使えること、平常時の点検時に簡便にデータを更新できること、被災前後の比較が素早くできることなどに配慮して開発された。

 

ため池DPの特徴

「ため池DP」には、全国約15万ヶ所のため池が登録されており、各ため池について、ため池番号、名称、所在地、緯度経度、堤高、総貯水量が登録されている。

ため池の写真や日常点検結果、監視カメラの画像、水位計のデータを閲覧する機能は、国や自治体のため池担当者を対象としている。

ユーザーは、担当している地域のため池の写真を登録することができる。登録情報として、撮影対象物、撮影日時、メモを登録することが可能。撮影対象物は、堤体、上流斜面、下流斜面、洪水吐、取水施設など任意の項目を登録できる。登録した写真を蓄積していくことで、ため池の経年変化を確認することができる。災害時には、被災前のため池の状態を確認することができる。

ユーザーは、担当している地域のため池に設置した観測機器の監視カメラの画像や水位計の水位データを登録することができる。監視カメラの画像や水位データを閲覧することで、豪雨や地震時のため池の異常を迅速に把握することができる。水位データは閲覧範囲を12時間から1年単位までの表示が可能で、豪雨時の水位監視や通年を通した水管理に活用することができる。

「ため池管理アプリ」を用いて実施した日常点検結果は「ため池DP」に格納される。過去の点検結果と比較することで、ため池の経年変化を把握することができる。

「ため池防災支援システム」と認証連携しており、「ため池防災支援システム」のユーザーアカウントを用いて「ため池DP」にアクセスすることができる。

ため池DPへのアクセスは、PCやタブレット、スマートフォンで可能。

 

アプリや動画、報告書を格納

「ため池DP」の活用例として、①ため池管理アプリを用いた日常点検の閲覧による管理状況の把握、②監視カメラ、水位計を「ため池DP」に接続することによる平常時のため池の維持管理の確認、③写真を登録することで、ため池が被災した場合に、ため池DPに登録された写真と被災後の写真を比較することによる被災箇所の迅速な確認などがあり、ため池の管理状況に関する各種データの集約化、共有化を図ることができる。

農研機構では今後、ICTなどを活用した情報化施工を支援するアプリケーションやドローンなどの無人航空機で撮影した動画、調査報告書等を格納する機能を追加するとしている。また、「ため池DP」に蓄積された画像や水位データを基に豪雨・地震時のため池の危険度を予測するモデルや、画像解析によるため池の異常を早期に発見する技術の開発も予定している。


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