国立文化財機構皇居三の丸尚蔵館(しょうぞうかん)では、企画展『いきもの賞玩(しょうがん)』を7月9日から開催する。同館は、皇室に代々受け継がれた品々を保存・調査・研究するための施設として、1993年に宮内庁三の丸尚蔵館として開館。昨年秋、〝皇居三の丸尚蔵館〟と名称を変えて新たなスタート切り、約8ヵ月間4期にわたる開館記念展を開いた。記念展後、初の展覧会となる同展では、地球上に生きる〝いきもの〟の姿を、数々の作品を通して見ることができる。会期は9月1日まで。
いきもの賞玩展は、①詠む・描く、②かたどる・あしらう、③いろいろな国から―の三つの視点で展示を行う=「見どころ」は一覧参照=。
このうち、「詠む・描く」では、「ヒト」は地球上の長い歴史・進化のなかで、文明を手に入れた。そのなかで、日本人は大陸の影響を受けつつ、文化を形成していきる。漢字や仮名の文字を使った詩歌、文学や芸能をもとにした絵、それらには人々に身近な「いきもの」も登場する。同展では、書跡から昆虫や鳥を詠んだ詩や和歌、絵画から動物が描かれている場面の絵巻など、さらに伊藤若冲の国宝《動植綵絵》からガチョウ(前期)と昆虫(後期)が描かれた作品を紹介する。
また、「かたどる・あしらう」は、〝いきもの〟は造形化され、置物や実用品として私たちの身近によくみられることを踏まえたもの。本物と見紛うがごとく精巧に作られるものもあれば、かわいらしさに心惹かれ 愛らしく作られるものもあるなか、かつて明治宮殿などを飾るために作られた大きな花瓶や壁掛けをはじめとする数々の工芸品を紹介する。
「いろいろな国から」は、皇室は公務を通じてさまざまな国との交流があり、世界平和のための外交を担っていることから、展示トピックとした。各国からその国の伝統工芸品や、国を代表する作家による美術品が贈られるなどしてきたを踏まえて、展示では、それらのなかから、鳥や魚、動物があらわされたものを紹介する。「美しいガラスの花瓶の魚、ランプの海洋生物、宝石の鳥、遥か古代の壺や現代の色鮮やかなアップリケの鳥や動物。世界の 各地から集合した〝いきもの〟の、多様な形や色を存分にご覧ください」としている。
同館では「生きとし生けるものの力強さや愛らしさとともに、命の等しさ、尊さに思いを巡らせていただければ幸い」と多くの来場を呼び掛けている。
また、賞玩には、〝そのもののよさを楽しむ〟という意味があることから、「作品を通して、いきものの魅力を存分にお楽しみください」としている。
皇居三の丸尚蔵館:平成元年(1989年)に上皇陛下と香淳 皇后により、皇室に代々受け継がれた美術品が国に寄贈されたことを機に、美需品などの保存と研究、公開を目的として、平成5年(1993)11月に皇居東御苑内に、宮内庁三の丸尚蔵館が開館した。
収蔵品は、各時代を代表する名品が多く含まれており、日本を中心とする東洋の美術工芸品をはじめ、幅広い時代、地域、分 野の品々がみられることが特長。
施設の拡充を図り、令和元年(2019年)からは、新館の建設が進められている。
◇尚蔵館が示す「三つの見どころ」
1.尚蔵館でいきもの探し!愛らしい小動物から一度見たら忘れられない魚の置き物まで、バラ エティ豊かな生き物たちが、書、絵、金属、陶磁、ガラス、刺繍…さまざまな造形 かたちで登場する
2.生き物の生命感をいかに瑞々 みずみず しく描写するかにこだわった伊藤若冲・国宝《動植綵(どうしょくさい)絵》のうち、《池辺群虫図》と《芦鵞 図》を公開!。写真撮影も可能(個人利用にかぎる)
3.皇室が各国との交流を担い、その中で寄せられた贈り物から、世界各地の「いきもの」の多様な形や色をお楽しみください