国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、MS&ADインシュアランスグループの三井住友海上火災保険㈱と、新たな発想の宇宙関連事業の創出を目指す「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J‐SPARC)」の枠組みのもと、7月から「宇宙旅行保険事業」に関する共創活動を行っている。
現在、宇宙旅行を目的とした保険はまだ本格的に運用されていない。その理由は、宇宙旅行者が少なかったことに他ならない。そのようななか、2021年は〝宇宙旅行元年〟と言われ、歴史上初めて、宇宙旅行者の数が職業宇宙飛行士の数を上回った。
さまざまな手段での宇宙旅行が実現または提案されている現在、それぞれのニーズに即した宇宙旅行保険が求められている。三井住友海上とJAXAは、『宇宙旅行保険の商品開発』及び『宇宙旅行マーケット拡大支援』に関する共創活動を行い、今、必要とされている「宇宙旅行保険」を創出・普及させることで、宇宙旅行に安心を加え、人類の経済圏の拡大に貢献することとしている。活動内容としては、①宇宙旅行保険の商品開発と②宇宙旅行マーケット拡大支援‐の二つを主に想定している。
□宇宙旅行保険の商品開発
「宇宙旅行」には、高度約100㎞を目指す小旅行、地球を周回する数日の旅行、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する滞在型の旅行など、さまざまな種類がある。それらの実現を目指す事業者とともに、それぞれのニーズ及びリスクを踏まえた最適な宇宙旅行保険の開発に関する共創活動を行う。
□宇宙旅行マーケット拡大支援
宇宙港や有人宇宙機の開発企業、旅行代理店を始めとする宇宙旅行関連事業に参画する企業との連携により、全ての人が気軽に安心して宇宙に行ける時代に必要なマーケットの拡大を支援し、貢献する。
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三井住友海上は、2015年から宇宙保険担当駐在員を海外拠点に常駐、スパークス・グループ株式会社が設立した「宇宙フロンティアファンド」への出資や、月面着陸船のリスクを補償する月保険の開発など、宇宙分野への参画を積極的に行っている。その知見と経験を活かし、共創活動では、JAXAから提供を受けた情報や、関連企業からのニーズを踏まえ、宇宙旅行に係るリスクを定量的、定性的に把握し、最適な保険を設計する。
JAXAは、毛利衛宇宙飛行士のスペースシャトル初搭乗から30年を迎え、その間積み重ねてきた有人宇宙活動での実績をもとに、訓練中から打上げ時、ISSでの滞在、帰還のサイクルで生じ得る事象や想定すべき事項に関する情報を提供する。
また、共創活動を通じ、保険業界で培われたリスクの把握や定量的評価方法に関する知見を獲得し、有人宇宙滞在に活かすこととしている。