東北大学病院とNECは9月21日、AI(人工知能)技術を活用して「医師の働き方改革」実現に向けた実証実験を10月1日から始めると発表した。カメラの映像やウェアラブルデバイスで取得したデータを解析し、医師の業務課題の抽出と改善策の提示を行う新たな要因解析モデルの有効性を検証する。
実証実験は、東北大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科の医師を対象に実施。医師の動線上に設置したカメラ映像や医師が装着するウェアラブルデバイスから取得する加速度情報を分析する。医師の活動内容(診察、PC操作、患者説明、移動など)を把握し、端末操作のログ情報からどの業務にどのくらいの時間を適切にかけているかを整理。その後、ウェアラブルデバイスから取得した加速度や脈波・発汗などの生理情報を分析し、医師のストレス度(肉体的負荷、心理的負荷)の可視化につなげる。
これらで得た情報を基にNEC独⾃の要因解析モデルによって医師の業務内容を自動で分析し、業務の効率化と持続化の両立に向けた業務改善の要因を推定。結果から課題に対する改善方法を提示し、業務改善効果の検証までを行う。
東北大病院とNECは今回の実証実験を通じて、今後、医師だけでなく病院内全体の労働環境改善と経営改善を両立させる解決手段の提案に取り組んでいく方針だ。
医師の働き改革をめぐっては、「勤務医の時間外労働の年間上限は原則960時間とする」という規定の適用が2024年4月からスタートする。こうした動きを受け、医療現場ではこれまで以上に、医師の業務を効率化する取り組みが重要になってきている。そのため今後は、医療現場での良質・適切な医療を効率的かつ持続的に提供する体制の確保に向けて、医師の労働環境の改善や健康維持、非医療業務の効率化などの働き方改革に向けた取り組みが求められている。