2022年8月8日 車載用燃料電池の水の可視化に成功 ―世界初の高性能化で、温室効果ガス削減に貢献―

NEDOの「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業」の一環で、燃料電池の解析技術の高度化に取り組んでいる高エネルギー加速器研究機構、日本原子力研究開発機構、J‐PARCセンター、日産アーク、技術研究組合FC‐Cubicは、豊田中央研究所、本田技術研究所、トヨタ自動車の協力の下、燃料電池自動車(FCV)に搭載される実機サイズの燃料電池セル内部の水の生成・排出に関する挙動を可視化することに成功した。

パルス中性子ビームを用いて実機サイズのセル内部の水挙動を明らかにするのは世界初。

今回の成果を活用することで、燃料電池の性能を左右する生成水の挙動を速やかに把握し、製品開発にすぐに反映できるようになることから、最適な燃料電池セルや流路構造の開発を加速し、燃料電池のさらなる高性能化・低コスト化が期待できる。これにより燃料電池車の普及拡大を図り、運輸部門などでの温室効果ガス排出量の削減に貢献する。

燃料電池は発電効率が高く、水素と酸素の化学反応を利用するため、発電時に水しか排出しないクリーンなエネルギーデバイス。このため、カーボンニュートラル実現に向けたキーテクノロジーとして期待されている。

日本では、燃料電池車や家庭用燃料電池を世界に先駆けて実用化するなど取り組みをリードしてきたが、さらなる普及拡大には燃料電池の高性能化や低コスト化が不可欠。

また燃料電池は、発電時に生成された水が燃料電池セル内部に滞留すると、水素や酸素の供給経路をふさぎ、発電性能の低下につながることから、セル外に水を効率的に排出できるセパレーターの流路や電極構造の開発が課題となっている。

 

NEDO、応用や利用にも期待

EDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業」で燃料電池の解析技術の高度化に取り組んでいる。

その一環として、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構、J‐PARCセンター、日産アーク、技術研究組合FC‐Cubicは、豊田中央研究所、本田技術研究所、トヨタ自動車の協力の下、FCVに搭載された燃料電池セル内部の水挙動を可視化することを目的に、大強度陽子加速器施設(J‐PARC)の大強度パルス中性子ビームによる非破壊観察技術(イメージング)のための撮像機器開発と環境整備を進めてきた。

そして今般、中性子イメージング用撮像機器の高度化と撮像条件の最適化、発電評価装置の構築が完了し、パルス中性子ビームを用いた実験系としては世界初となる実機サイズの燃料電池セル内部の水の挙動をほぼリアルタイムで可視化することに成功した。

またパルス中性子の特長を生かすことで、燃料電池セル内部の水と氷の識別や、水のミクロな挙動とその詳細な解析を組み合わせて可視化するなどのさまざまな応用や利用に展開できる。


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