2024年6月26日 訪問介護、事業者の倒産が急増 過去最悪を大幅に更新 報酬改定など影響か

訪問介護の事業者の倒産が急増している‐。東京商工リサーチが7日に公表した新たなレポートによると、今年1月から5月の倒産は34件。この期間としてはこれまでで最も多くなった。

今年は「通所・短期入所」の倒産も多く、1月から5月は22件。同じくこの期間の過去最多を記録した。

1月から5月の合計は72件。コロナ禍に見舞われた2020年、2022年を大幅に上回る過去最悪のペースだ。各年の上半期(1月から6月)でみると、これまでは2020年の58件が最も多かったが、今年は5月まででそれを大きく超えている。

最大の要因はやはり訪問介護。前年同期から13件増え、全体に占める割合も47.2%と大きい。倒産に至った事業者の8割弱を、職員が10人未満の小規模なところが占めている。

4月の介護報酬改定が影響している可能性が高い。

訪問介護はもともと深刻なホームヘルパー不足に苦しんでいたが、長引く物価の上昇、他産業の賃上げの進展、事業者間の競争の激化などで経営環境の厳しさが増していた。そこで断行された基本報酬の引き下げ。これは新設・拡充された加算の取得でカバーできるが、そうした余力のない事業者は行き詰まる恐れがある。

東京商工リサーチは現状を、「介護報酬の引き上げが人材不足や物価高などのコスト増に追い付かない実態を示している」と分析。「人材不足や物価高などの根本的な問題は単独で解決できないだけに、しばらくは倒産の増勢が続きそうだ」と説明した。

もっとも、現時点での倒産件数の増加だけで介護報酬改定の是非を断じるのは早計かもしれない。多くの事業者が経営を安定させる努力を重ねているなか、倒産には健全な市場で生じる自然な淘汰という側面もある。

とはいえ、関係者の懸念は一段と強まりそうだ。地域で必要なサービスを受けられない「介護難民」が増えてしまう、という声を現場では頻繁に耳にする。

全国介護事業者連盟の斉藤正行理事長は倒産急増の背景について、「4月の介護報酬改定が事業者に与えた心理的なショックも大きい。経営環境がもともと厳しかったなか、国の姿勢に失望したり先行きを悲観したりして事業継続を諦めてしまったところもある」と指摘。「一部の悪質な事業者だけでなく、しっかりと思いを持って地域で高齢者を支えている事業者も追い詰められている。訪問介護は欠かせない重要なサービスだ、という正しいメッセージを改めて伝えるべき。そのためにも、物価高騰の対策や職員の処遇改善などの支援策を更に強化する必要がある」と述べた。


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