全国の私立大学3801学科(577校)の学費を調査したところ、初年度納入額で全体の約22%、卒業までの総額で約24%の学科・大学で値上げした実態が、民間企業の調査で明らかとなった。初年度納入金を引き下げた学科のうち約6割で卒業までの総額が前年度より上がるいわゆる「実質値上げ」となった。この実質値上げの割合は前回調査(24年度)では3割に過ぎなかったが、人件費等の上昇による物価高や財政安定化等を反映した私立大学の学費の引き上げ傾向が鮮明となった。
この調査結果を公表したのは、全国の小学校から大学・専門学校までの学費を検索・比較できるサイト「学費ナビ」を運営している(株)アイガー(東京・千代田)。学費ナビに登録された2025年度のデータを用いて行った。
文部科学省の私立大学に関する調査では学費の平均値しか把握できない。しかも、私立大学の学費は国立大学とは違い大学・学部ごとに異なる。分かりにくいといわれる私立大学の学費の実態が把握できる調査で、学費ナビによる学費実態調査は昨年に次いで2回目となる。
「学費ナビ」のデータから、2025年度の学費が値上げになっている学科・大学を調べると、初年度納入額では、844学科(107校)で、全体の約22%にあたる。また卒業までの総額でみると、906学科(116校)、全体の約24%。前回調査の18%から6ポイント増えたうえ、初年度納入額を値上げした学科・大学を上回った。
また、「値下げ」が行われたのは88学科(22校)あるが、そのなかの約6割にあたる53学科(11大学)では、総額が改定前より高い〝実質的な〟値上げとなっている。
値上げの平均額(総額)は人文科学・社会科学系17万円台から理学・工学系21万円台:総額でみた場合に、5%未満の値上げが620学科(90校)で16%、5%以上が286学科(41校)で8%となった。
実際の金額は、値上げした学科の総額の平均は概算で、文系では人文社会系の学科が平均17万8000円、社会科学系17万6000円、理系では理学系21万1000円、工学系20万2000円となり、文系より理系の方で値上げ幅が大きいことが判明した。
大学の学費の引き上げについては、物価上昇をはじめ、「財政の安定化」「教育環境の向上と学生サービス」などさまざまな要因が絡んでおり、具体的には以下のような理由が挙げられる。
このうち財政安定化に関する値上げは、大学の収入は学生からの学費収入と、国からの助成金で成り立っているため、入学者の減少が収入の減少に直結することから、学生数の減少により、一人当たりの学費を上げざるを得ない状況になっている大学が増えているという現状があるという。
また、建物や設備の維持・管理に加え、ICTに関わるインフラの整備やアップグレード、教育のグローバル化による留学生の受け入れや、海外の大学との連携強化などにも多額の資金が必要となる。さらに、キャリアサポート、メンタルヘルスケア、学習支援など学生へのサービスを充実させることも必要。こうした教育環境の向上と学生サービスの拡充のために学費を値上げする大学も一定数存在する。