2024年9月18日 画像認識AIで繁殖牝馬の分娩兆候を検出するシステム 分娩監視の労働負担軽減、分娩事故の低減に期待

北里大学獣医学部動物飼育管理学研究室とノーリツプレシジョン株式会社は、画像認識AIで競走馬生産牧場での繁殖牝馬の分娩兆候を非接触で検出して飼養者へ通知するシステムを開発・製品化した。競走馬生産牧場では、これまで昼夜を問わず分娩監視が行われていたが、このシステムにより、監視にかかる労働負担が軽減することが期待される。また、分娩兆候通知メールにより適切な介助が実現することで、分娩事故が低減することにも大きな期待が寄せられている。

馬の妊娠期間は、330日から360日と非常に幅があり、分娩は夜間に多く起こることが知られている。さらに、競走馬の1頭単価は非常に高額であり、生産牧場にとって出産時の事故による損失は経営上大きな問題である。

そのため、飼養者は分娩事故を防ぐために昼夜を問わない長期間の分娩監視が強いられており、過重な労働負担となっている。このことから、分娩時期を特定し、分娩事故を低減するための技術が求められていた。

これまで分娩予測技術としては、外見的な分娩兆候(乳房の腫脹や乳ヤニの付着、漏乳、外陰部の弛緩等)や乳汁中のpHや糖度の変化が用いられてきた。しかし、いずれも大まかな基準としての活用に留まっている。近年では、監視カメラの導入が進められているが、分娩監視の効率化には寄与しているものの、常時監視を行う必要がある。

 

北里大学の取組

北里大学獣医学部動物飼育管理学研究室では、2016年から画像認識技術を用いた牛の分娩兆候検出に関する研究に着手し、2021年に分娩検知システム「牛わか」として製品化した。20017年からは、この基礎研究成果を応用し、サラブレッド種繁殖牝馬の分娩兆候を非接触的に検出する研究も開始しており、全国各地の生産牧場の協力を得て実証研究を進めてきた。

 

実証研究で95%の検知率

今回開発された繁殖牝馬の分娩検知システムは、分娩予定馬を最新のサーマルカメラで監視し、画像認識AI技術により、分娩前に特徴的な行動と体表面温度の変化を検出したときに飼養者に自動通知することで、適切な分娩介助を支援する。これまでの実証研究では、95%の検知率が得られている。北里大学獣医学部が進めているICT(情報通信技術)を活用した家畜生産技術の基礎研究をもとに、生産現場のニーズに応え、民間企業と協業して開発されたシステムである。本製品の導入により、分娩監視にかかる労働負担の軽減や、分娩事故の低減が期待される。

この繁殖牝馬の分娩検知システムは、「馬もり(うまもり)」の商品名で、ノーリツプレシジョン株式会社から今年の秋に発売される予定だ。


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