グリーン鉄市場を拡大することで鉄鋼業のGXを推進していくためのアクションプラン等を検討していた、経済産業省の「GX推進のためのグリーン鉄研究会」(座長:日本エネルギー研究所 工藤拓毅研究理事)は1月23日、検討結果のとりまとめを行った。
鉄鋼業は、日本の温室効果ガス排出量の約1割(産業部門の4割弱)を排出しており、脱炭素化社会の実現にあたっては、GXの推進を通じた排出量削減が必要となる。一方、脱炭素化された製鉄プロセスによる鉄鋼製品の製造コストは、初期においては、従来の製品よりも割高になる可能性がある。
現在、国内外でグリーン鉄を販売する動きがあるが、GX投資を持続的に行うためには、「グリーン鉄」(グリーンスチール)市場の拡大が重要となっている。
経産省では、昨年10月に研究会を立ち上げ、5回にわたり議論を行い、市場拡大のためのアクションプラン等を検討した。
研究会とりまとめでは、①GX価値の訴求と国際標準等への反映、②鋼材のCFP活用拡大、③需要側への支援、④供給側への支援―に取り組むことが重要と提言している。
このうち、GX価値の訴求、国際標準への反映では、GX価値の意義についての国内外の理解促進、worldsteel(世界の鉄鋼企業が加盟する団体)や国際イニシアティブとの連携、GX推進のためのグリーン鉄が国際的に製品のカーボン・フットプリント(CFP)が低いものとされる手法についての国内外の議論促進、鉄鋼製品に係るCFPの製品別算定ルール算定、国のCFPガイドラインへの反映、建築物のライフサイクルアセスメント(LCA)等の国の施策への採用検討を求めている。
鋼材のCFP活用拡大では、需要家におけるCFPの活用促進、低環境負荷鋼材の利用拡大、鋼材のCFPデータの整備・開示の推進、鋼材の非化石証書利用の考え方の整理が必要とした。
需要側への支援では、「GX推進のためのグリーン鉄」の生産初期段階における政府による優先的調達・購入などを通じた重点的支援、CEV(Clean Energy Vehicle)補助金における自動車製造業者へのインセンティブ付与を提言した。
供給側への支援では、複線的な技術開発や設備投資支援・税制措置など供給側に対する支援のほか、関係事業者間の連携を通じた、鉄スクラップの有効活用を促進することを求めている。