今年の介護事業者の倒産件数が過去最多を更新したことが、東京商工リサーチのまとめで明らかになった。
11月1日時点の集計(速報値)によると、今年1月から10月の倒産件数は144件。これまで最も多かった2022年の143件を早くも上回った。
サービスごとの内訳をみると、訪問介護が71件で最多。通所・短期入所が48件、有料老人ホームが11件、その他が14件となっている。これらは全て前年を上回っていた。
倒産件数の急増の背景には、深刻な人手不足、物価の高騰、人材確保や利用者獲得をめぐる競争の激化などがある。今年度の介護報酬改定が事業者に打撃を与えた可能性も高い。今年はまだ2ヵ月残っており、数字はこれから更に大きくなる見通しだ。
介護業界では法人の新設が増加傾向にあり、スケールメリットを見込んで事業者が大規模化を図る動きもみられる。倒産件数の急増は業界の再編、適者生存の新陳代謝が進んでいることの現れでもある。
一方で、地域によっては介護サービス基盤の弱体化が顕著となっており、いわゆる「介護難民」の問題の加速を懸念する声も強い。関係者の間では今後、倒産件数の急増をどう位置付け、どんな対策を打つべきかという論争が、一段と熱を帯びることになりそうだ。