農研機構、株式会社オーレック、地方独立行政法人青森県産業技術センターは共同で、リンゴ黒星病の発生源となる落葉の収集機に関する共同研究を行い、その成果である落葉収集機を2022年3月に市販化することを公表した。この落葉収集機は、雪解け後の地面に張り付いた落葉に対し8~9割の除去率を達成するとともに、手作業の約30倍の作業能率で収集することができる。
効率的なリンゴの落葉収集機の開発を求める声
「リンゴ黒星病」は、リンゴの葉や果実に褐色の病変を形成する病害。主に被害落葉で越冬し、4月上中旬頃から子のう胞子が飛散することで拡散する。一次感染した葉から別の葉や果実へと二次感染を繰り返し、病害が広がる。感染した果実は外観が悪くなることで商品価値を失うため、多発すると経済的な被害を及ぼす。また、近年、これまで使用していた農薬が効かない耐性菌が確認され、病害のまん延が危惧されている。
この病気の発生を低減させるには、発生源となる前年の落葉を収集し、樹園地の外に搬出することが有効であることが知られている。しかし、リンゴの主産地である青森県では、秋に葉が落ち終わる前に積雪が始まるため、雪解け後に地面に張り付いた落葉を取り除く必要があるが、ブロアーやバキュームスイーパーなどの既存の機械では、地面に張り付いてしまった落葉を除去することは難しい。また、手作業による落葉収集は能率が低く、作業従事者の減少により実施することが困難となっており、効率的なリンゴの落葉収集機の開発が求められていた。
開発機の特徴・強み
農研機構、オーレック、青森県産業技術センターらが開発した落葉収集機は、回転ブラシ、接地輪、バケットで構成されるスイーパーと落葉収集レーキから成り、乗用型草刈機(既存製品)でけん引を行う。接地輪の動力で回転するブラシの前方にレーキを配置することで、レーキでかき起こされた落葉を回転ブラシでバケットに収容する。バケット内の落葉を樹園地外の集積所に排出する際は、運転席に座ったままでバケットの持ち上げや排出操作を簡単に行うことができる。
樹木が整列している比較的大規模な樹園地での本機の作業能率は、落葉の樹園地外への搬出時間を除いて約30a/(人・h)であり、手持ちのガーデンレーキを用いた手作業での作業能率は0.9a/(人・h)だった。このことから、本機の作業能率は、手作業の約30倍となる。また、作業箇所での落葉除去割合は8~9割であり、樹冠下など走行作業ができない場所を含めた樹園地全体で見ても5~8割の落葉除去割合だった。
2022年3月に市販化の予定
今回開発された落葉収集機で落葉を収集することにより、無処理区に比べてリンゴ黒星病の原因菌の飛散胞子数を減らすことができたことから、リンゴ黒星病の発生を低減させることができると期待されている。
本機は、リンゴ栽培樹園地における落葉収集作業での実用的な性能を有する見通しが立ったため、2022年3月にオーレックから市販化される予定だ。