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2017年3月6日 「願はくは花の下にて春死なむ・・・・」

今年も桜の時節を迎えようとしている。ひと月余りかけて桜前線は列島を北上する。何故か桜をもの悲しく感じるのは、満開になったと思うそばから駆け足で散ってしまうからかもしれない。桜といえば、西行の「願はくは花の下にて春死なむ その如月の望月の頃」である。亡くなる十数年前に詠んだ遺言のような歌のとおり、釈迦の命日である旧暦の2月15日の翌日に満開の桜の中で逝ったそうだ。

日本老年学会などは、高齢者の定義「65歳以上」を「75歳以上」に引き上げることを提言した。医療の進歩と健康意識の高まりで、「65歳以上」の定義した頃より確実に5歳~10歳若返った現実を認識せざるを得ないという。しかし、高齢者とって定義より切実な願望は、健康な状態で平均寿命を超えて、長生きのエリ-トを目指すとともに、出来るだけ家族へ介護負担をかけないことだそうだ。特に、根治できない進行性の病気である認知症を患うことだけは避けたいと願っている。

高齢者の認知症問題を考える時、阿部牧郎の「われを殺せ」の短編小説を思い出す。徳川幕府末期に、痴呆が始まって医者を引退した蘭医青木芳斎が斬り殺された。名医として慕われた芳斎には人に恨まれる理由はない。犯人は新撰組隊士の海江田栄之助とわかった。奉行所が芳斎の眠る寺を調べたところ、寺の住職は「青木芳斎はよく本懐を遂げられた」とむしろ褒めるのである。聞けば、芳斎は栄之助の父親が死の直前、断末魔の苦しみの中で栄之助に頼まれて毒を盛った。その代り自分が呆けた時の始末をつけてもらう約束を取り付けていた。

さて、高齢者のバスツア-旅行で、今人気なのが「ぽっくり寺」への往生祈願だそうだ。奈良県斑鳩町にある清水山顕光院吉田寺(きちでんじ)が、そのぽっくり寺である。「煩わず、苦しまず、終わり良ければ全てよし」と講話する山中真悦住職は、「今の人(高齢者)にとって、先々のことは死ぬこと。本当に刹那的」と少し寂しそうに呟くそうだ。西行の歌「願はくは花の下にて春死なむ・・・」のパクリで恐縮ですが、「願はくはPPK(ピンピンコロリ)で大往生、花の頃ならこれぞ本懐」


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