2019年7月16日 統計をめぐる孫と祖父のエピソード

金融庁のワーキング・グループがまとめた報告書「高齢社会における資産形成・管理」。「老後資金2000万円」が独り歩きした問題は、終盤国会での論争の的になった。令和最初の参院選挙においても、引き続き年金制度との絡みで2000万円問題は争点となり止むことがない。そもそも先月の上旬、麻生太郎担当大臣は「老後を豊かにする金額で一定の前提から試算」と当初釈明。最終的には「公的年金で老後生活がある程度賄えるとする政府の政策スタンスと異なる」として報告書の受理を拒否した。ただ、報告書に使われた統計データそのものを否定した訳ではないようだ。

戦後の復興期、麻生氏の祖父である吉田茂総理大臣の統計に関する発言である。終戦直後吉田は「餓死者が大勢出るため米国から大量の食料を送るよう」GHQに訴えた。実際にはそのような事態は起こらず、GHQから「日本の統計はでたらめだ」と詰め寄られた。その際、吉田は「日本の統計が正確だったら、米国とは戦争などしていない」と応えている。ただ、吉田は正確な統計の重要性を認識しており、昭和24年統計委員会を設立。総理大臣として「統計の整備は、日本再建基礎事案中の基礎事案」という信念を披露した。孫と祖父の統計をめぐるエピソードである。

今回の試算の根拠は、総務省の家計調査による平均値にある。調査は約9千世帯を対象に家計の収支と貯蓄を調べている。2017年のモデル世帯データでは、平均収支差額は5万4,520円で老後の不足額は2千万円だった。ところが18年のデータでは同じ条件で平均収支差額は4万1,872円で1千500万円と少なくなる。家計調査の対象世帯を定期的に入れ替えるだけで500万円の差が生じる。所得や貯蓄は個人差が大きく、かつ対象の違いだけで収支の平均値のブレが大きいのは自明のこと。統計データだけでその実態が捉えることは難しいが、老後生活に必要な資金の目安として有効なデータであったことは間違いない。

さて、19世紀のフランスの統計学者モーリス・ブロックは、「国家の存するところに統計あり」といった。昨年秋に行った日経新聞の世論調査では、「老後に不安を感じている人」は77%占め、30~50歳代では8割を超えた。また厚労省の2018年「国民生活基礎調査」によれば、年金を受給する高齢者世帯中、収入源が年金のみという世帯は5割にのぼっている。庶民感覚では年金だけで老後の生活は困難ということを大半が承知していると思われる。「たかが統計、されど統計」のようなエピソードかもしれないが、今回の報告書は老後の生活設計が如何にあるべきかを示唆したものであり評価に値する。


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