9月中旬に厚生労働省は、システムの不備や事務処理ミスによって10万6千人の公的年金約598億円の支給漏れがあったと発表した。1人当たり平均で約56万円、その大半が公務員世帯という。支給漏れの発表から1カ月後、遺族年金受給資格喪失者約1000人分の過払いが会計検査院の抽出調査で判明した。2カ月連続で日本年金機構の年金支給事務におけるミスが発覚した訳である。

公務員共済年金は、配偶者の扶養手当として「加給年金」が上乗せされ、配偶者が老齢基礎年金の受給から「加給年金」が「振替加算」に替わる。今回の支給漏れは、この振替加算部分が未払いになっていたという。2015年10月に共済年金と厚生年金が一元化されたが、事務手続きは2つに分かれたままだった。この2組織の連携不足で260億円の支給漏れが発生、全体の半分近くにあたるという。支給開始年齢が65歳まで段階的な引き上げ途上で、事務の複雑な時期であったとはいえ年金の官民一元化が未だ道半ばといった実態が露呈した格好だ。一方、遺族年金の過払いは、受給資格喪失者の「失権届」の記載内容を住民基本台帳や戸籍と照合確認を怠ったことにあるという。

所変わって、米国州政府でも年金問題を抱えているそうだ。「米国のベネズエラ」と呼ばれるイリノイ州は、2010年以降、州政府の年金債務が2,510億ドルまで積み上がり、年金運営は破綻状態にある。米国は支給漏れといった年金問題ではないが、州財政の破綻危機が年金運営に起因していることからより深刻問題である。米国50州では、年金問題を抱えていない州が少数派といった現状だそうだ。

さて、約130兆円を運用する年金積立金管理運用機構独立行政法人(GPIF)の運用実績は、本年7~9月期4兆円半ばの黒字で、プラスは5四半期連続。世界的な株高を追い風に運用益を積み増しそうだ。衆院選の与党大勝から政策は継続され、企業業績の拡大期待感と相俟って日経平均株価は2万2000円も視野に入る中、引き続きGPIFの資産運用に期待したい。「消えた年金問題」を契機に社会保険庁を解体して発足した日本年金機構。今回の支給漏れで関係役職員の処分は9月末に実施された。支給漏れの発表時、11月中の精算を公表している。先ずは支給漏れの確実な精算を実施し、年金機構の信頼回復に向けて地道に取り組むとともに、年金事務プロフェッショナルとしての自覚と更なる奮闘努力を促したい。