農林水産省では、昨年3月に世界的に重要かつ伝統的な農林水産業を営む地域を認定する「世界農業遺産」の認定に向け、宮城県大崎地域の「持続可能な水田農業を支える『大崎耕土』の伝統的水管理システム」、静岡県わさび栽培地域の「静岡水わさびの伝統栽培(発祥の地が伝える人とわさびの歴史)」、徳島県にし阿波地域の「にし阿波の傾斜地農耕システム」を申請地域として承認した。これらについては、FAO(国連食糧農業機関)にて審査が行われていたが、昨年12月に宮城県大崎地域が世界農業遺産として認定された。静岡県わさび栽培地域と徳島県にし阿波地域については引き続き審査が行われており、静岡県わさび栽培地域に関しては今月29日と30日に現地調査が予定されている。

 「世界農業遺産」は、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、それに密接に関わって育まれた文化、ランドスケープ、シースケープ、農業生物多様性などが相互に関連して一体となった、将来に受け継がれるべき重要な農林水産業システムを認定する制度。各国政府の承認を得て申請された地域についてFAOが認定する仕組みで、わが国では、農林水産省がFAOへの申請を承認している。

 平成29年12月末現在、19ヵ国45地域が登録されている。日本国内でも、今回認定された大崎地域のほかに、2011年に新潟県佐渡市の「トキと共生する佐渡の里山」、石川県能登地域の「能登の里山里海」、2013年に静岡県掛川周辺地域の「静岡の茶草場農法」、熊本県阿蘇地域の「阿蘇の草原の維持と持続的農業」、大分県国東半島宇佐地域の「クヌギ林とため池がつなぐ国東半島・宇佐の農林水産循環」、2015年に岐阜県長良川上中流域の「清流長良川の鮎」、和歌山県みなべ・田辺地域の「みなべ・田辺の梅システム」、宮崎県高千穂郷・椎葉山地域の「高千穂郷・椎葉山の山間地農林業複合システム」が登録されている。

 今回登録された大崎地域は、伝統的な稲作地帯であり、「やませ」による冷害や地形的要因による洪水、渇水に対処するため、取水堰や隧道・潜穴、水路、ため池などの水利施設が築かれるとともに、地縁組織である「契約講」を基盤とする水利組織によって巧みな水管理が行われてきた。また、水田や水路、水田の中に浮かぶ森のような屋敷林「居久根(いぐね)」のつながりが、多様な動植物が存在する豊かな湿地生態系を育み、独特のランドスケープを形成している。

 また、大崎地域では、今回の認定をきっかけに、地域の基盤である資源豊かな農業を活かした地域の活性化と、誇りある地域づくりを目指し、「地域に存在する里地・里山の宝(豊かな農業、景観、生物多様性)の再認識と活用」、「地域の宝に光を当て、守り、磨き、育む体制づくり」、「地域外への発信・共有と地域間交流の促進」を進めていくとしている。

 こうした制度については、地域の魅力を世界に発信することだけでなく、地域の人々が自らの住む場所の歴史、伝統、文化などを見直し、その特色に気づく機会となるといった面でも効果がある。そうした〝気づき″が自信につながり、地方の活性化や日本全体の活力の増大につながることが期待される。