8月3日に内閣改造が行われ、農林水産大臣には、これまで農林水産副大臣を務めてきた齋藤 健氏が就任した。就任会見では、最近の豪雨による被害について「先の豪雨災害では、福岡、大分、島根、秋田の4県などで600億円を超える農業被害が出ている。この件に関しては、できるだけ早く激甚災害を閣議決定していかなければならない」と対応方向を示した。また、自民党農林部会長、副大臣を務めてきた経験を踏まえ、「この4年間で災害対策をやってきたが、その中で迅速に対応する体制ができつつある。査定前着工も進んできており、農林水産省としてできる限りのことをやっていくということに尽きる」との考えを明らかにした。

こうした中、農研機構は、7月の九州北部豪雨災害への技術支援の一環として、福岡県朝倉市内の13ヵ所のため池について、九州農政局、福岡県と合同で現地調査を実施した。その結果、流域で発生した土石流の影響や河川の浸食の影響で、ため池を含む一部地域に大きな被害が発生していたが、ため池によっては上流からの土石流を貯留し、下流の被害軽減に貢献したことが分かった。

農研機構は、災害対策基本法に基づく指定公共機関に指定されており、地震や台風等で大きな災害が発生した場合には、農林水産省からの要請に応じて現地に職員を派遣するなど、災害への技術支援活動の中核的役割を果たしている。7月の九州北部豪雨災害については、7月10日に農林水産省農村振興局からのため池に関する支援要請があり、それを受けて12日から14日にかけて調査が行われた。

今回、多くの被害が報じられた福岡県朝倉市山田地区の鎌塚ため池では、上流からの土石流や流木と山の神ため池の決壊土砂が鎌塚ため池の貯水池に流入し、設計より高い貯水位となったが、決壊は免れた。洪水吐の性能が高かったことが決壊を免れた要因の一つとして考えられる。また、貯水池や洪水吐下部には土砂や流木が大量に堆積しており、山田地区への土砂・流木の流入を大きく軽減したものとみられる。さらに、一時的に貯留した土砂・水・流木により、下流への氾濫のピークの大きさと時間を遅らせる効果があったと推定される。

杷木地区にある梅ヶ谷1ため池では、上流の山腹から大量の土石流と流木が貯水池に流入したが、洪水吐の水路周辺の軽微な損傷に留まった。ため池が砂防ダムの役割を果たし、下流の住宅等への被害を大きく軽減したものと考えられる。また、今回の九州北部豪雨では、同地区の上野ため池など、梅ヶ谷1ため池と同様に、土砂を受け止め下流住宅への被害を軽減したと思われるため池が複数存在していた。

一方、山の神ため池・山の神2ため池では決壊という大きな被害が発生したが、洪水吐の設計以上の降雨による流入に加え、上流からの土石流・流木が流入したため、堤体上を土砂と流木が越流して決壊したものと思われる。設計では考慮されていない流木による洪水吐の閉塞も決壊の一つの要因として考えられ、今後、土石流被害を抑止するためには、閉塞しない洪水吐構造やため池池敷上流側に土砂受け堰堤を設置するなどの対策が考えられる。

今回の調査結果は、今後の防災・減災対策を推進していく上でも重要なものとなる。結果を分析し、今後のため池の整備や補修などに反映していくことが、多くの人の生活や財産、人命を守ることにつながる。