2022年11月25日 【電通大】医療用レーダーを利用し完全非接触で小児のバイタルサインを検出~NICUでの見守りや園児バス置き去り検知にも活用~

電気通信大学の孫光鎬准教授(機械知能システム学専攻)と阿部祥英センター長(昭和大学江東豊洲病院こどもセンター)らの研究チームは、新生児集中治療室(NICU)での新生児モニタリング用に、医療用レーダーによるバイタルサイン・モニタリングシステムを開発した。高度な信号処理アルゴリズムにより、従来の呼吸と心拍計測に迫る精度でありながら、完全非接触での測定が可能。

このシステムでは、非接触医療用レーダーと、呼吸信号と心拍信号を分離する非線形フィルタ、心拍データを抽出するテンプレートマッチング・アルゴリズム、さらに脈動を時系列で推定する適応型ピーク検出アルゴリズムが採用されている。

臨床試験には、5人の男性と4人の女性(24 ±5歳)で構成する9人の健康な被験者が参加した。実際のNICU環境では、2人の新生児を含む3人の低年齢小児の臨床試験が行われた。試験の結果、従来の接触式センサと比較して、相関係数がRR(心拍数変動)、HR(心拍数)、IBI(心拍間隔)それぞれで、0.83、0.96、0.94と高い相関を示した。

小児は生理機能が未熟であり外界からの刺激を受けやすいため、呼吸・心拍などのバイタルサインは変動しやすいとされている。また、新生児は自分の症状や苦痛を表現できない。このためNICU等では、バイタルサインによって全身状態を把握し、異常を早期に発見することが重要となる。

しかし、従来のバイタルサイン測定では接触式のセンサが用いられることから、小児へのストレスを最小限にする工夫が求められてきた。また、接触式センサでは、体動や啼泣により測定値が変動しやすいという課題もあった。

非接触式のバイタルサイン検出システムを用いれば、ストレスを軽減しながら、NICUだけでなく家庭内や自動車内など、様々な場所でヒトの健康状態を確認できるようなサービス提案につながると期待される。

例えば昨今では、園児がバスの中に置き去りにされるという事案も発生しており、取り残された児童をレーダーによるセンシングによって高精度に検出する技術への期待も高まっている。

今回の研究で提案したシステムは、非接触医療用レーダーと高度な信号処理アルゴリズムの組み合わせにより、高精度に小児の生体活動の見守りを行うことができるもの。この技術を応用すれば、医療、在宅ケアやモビリティなど、さまざまな分野での安全・健康管理や、医療福祉人材の人手不足解消に貢献することができる。

電気通信大学発ベンチャー企業の㈱Sun Lab(東京都調布市)では、この技術を用いたNICU」向けの見守り製品開発や、自動車内での児童見守りシステムなどの試作検討を始めている。また、この技術を活用した医療機器やサービス、コンシューマ製品開発を共同で行う企業を募集している。


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