2019年10月23日 IoT活用で多様な働き方支援 安心安全・効率的な農業経営へ実証実験

JA全農とNTT東日本、NTTアグリテクノロジーは、JA全農が運営する次世代施設園芸「ゆめファーム全農」で、IoTを活用した農作業者の健康管理・労務管理を通じ、農業経営を支援する実証実験を開始する。

この実験では、IoTを活用し、身体にかかる負荷を計測・可視化することで、管理者への注意喚起や適切なタイミングで休憩を促す等の措置を行う。また、農作業者の作業箇所・作業時間等の可視化も併せて行い、最適な労働環境や適正な労務管理を行う仕組みを提供し、安心安全・効率的な農業経営の実現を目指していくとしている。

国内の少子高齢化に伴い、農業従事者は減少傾向にある。一方で、地域の担い手農家を中心に農業経営の大規模化、農業法人化が進み、農業経営では従業員を雇用し、労働力を最大限に活用することの必要性が増している。

また、深刻な労働力不足の中、「農福連携」や「外国人技能実習生の受入」、「地域の人材との連携」が持続可能な農業の実現に向けて注目されている。

こうした状況の中で、農作業者の健康や安全を確保し、かつ経営者や現場監督者と農作業者間の適切なコミュニケーションを促すことにより、作業計画の策定・見直し、作業者の適正配置や作業の標準化等の労務管理を効率的に行うことが重要である。

今回の実証実験では、次世代施設園芸をフィールドとし、課題となっている高温多湿の環境による年間を通じた熱中症発症リスクや、広大な面積における適切な労務管理の解決を目指すことを目的としている。IoTを活用することで、農業経営の高度化、省力化を推進し、多様な人材が働きやすい職場環境作りを後押しすることが狙いだ。

 

実証実験の内容・目的

実証実験では、高知県安芸市に所在する「ゆめファーム全農こうち」にて、農作業者に腕時計型のウェアラブルデバイスを装着してもらい、バイタルデータや位置情報等を取得する。取得したデータは、省電力でkm単位の距離で通信できる無線通信技術「LPWA」を通じてクラウド上に蓄積され、どこからでもPC・タブレット等で確認することができる。

また、取得情報をもとに、農作業者の身体負荷状況や作業状況等を可視化し、予め設定した条件に合致した場合に経営者や管理者にメールでアラート通知を行うことで、タイムリーな健康管理や適切な労務管理を実現する。

今回は、年齢や作業経験期間が異なる数名の農作業者を対象に実証を行う予定だ。

 

具体的な実施事項

〔1.農作業者の健康管理〕

農作物を最適な環境で栽培するためファーム内に設置しているセンサーで取得する温度・湿度・日射量をもとに、熱ストレスの評価を行うWBGT(暑さ指数)を算出する。この値が基準値を超え、かつウェアラブルデバイスで取得した心拍数データから暑熱負担が増大していると判断した場合に管理者等に通知を行う。通知に基づき、注意喚起や適切な声かけによる体調の確認、休憩を促す等の行動につなげることで、農作業者の健康を確保する。

併せて、農作業者が転倒した場合の検知、管理者等への通知も行い、広大なファーム内でも農作業者にとって安全な環境を整備する。

〔2.農作業者の労務管理(予定)〕

ウェアラブルデバイスで取得する位置情報と、労務管理アプリケーションに記録した作業内容等の情報を相互に連動させ、農作業者の労働時間や生産性等を可視化する予定。これまで紙媒体や表計算ソフトで管理していた労務管理を、タブレットとウェアラブルデバイスによる管理を用いることで予定されている作業の進捗等を正確に把握するほか、集計作業の簡略化を実現する。

〔3.外国人技能実習生等とのコミュニケーションへの活用(予定)〕

今後国内で増加が見込まれる外国人技能実習生等との適切なコミュニケーションを目的に、健康管理・労務管理アプリケーションに多言語翻訳機能やメッセージ機能を搭載していく予定だ。


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