2018年3月22日 30年「みどりの学術賞」受賞者を決定 みどりに関する学術上の顕著な功績があった2名

平成30年「みどりの学術賞」の受賞者が決定した。この表彰は、植物や森林など「みどり」に関する学術上の顕著な功績のあった個人を表彰するもの。今回は、自然環境の保全管理の基本となる景観影響評価方法論の構築と自然環境についての国民への理解と普及に大きく貢献している東京大学名誉教授、兵庫県立淡路景観園芸学校名誉学長の熊谷 洋一氏、植物の環境ストレス応答機構を解明し耐性作物を開発した東京大学大学院農学生命科学研究科教授の篠崎 和子氏が受賞することとなった。表彰式は、4月27日に東京都内で開催される「みどりの式典」で行われる。

「みどりの学術賞」は、「みどり」についての国民の造詣を深めることを目的としたもの。今回が12回目の表彰となる。国内において植物、森林、緑地、造園、自然保護等に係る研究、技術開発、その他の「みどり」に関する学術上の顕著な功績のあった個人に内閣総理大臣が授与する。受賞者は、「みどり」に関する学術に深い見識をもつ有識者で構成される「みどりの学術賞選考委員会」での審議により決定される。

今回の選考にあたっては、全国の学識経験者400名が、受賞にふさわしい候補者として、約30名を推薦。調査・審議の結果、その中から、景観計画の分野で大きな功績を残している熊谷氏と、植物分子生理学の分野で活躍している篠崎氏の2名が受賞することとなった。

選考委員会の委員長を務める中央大学理工学部教授、東京大学名誉教授の石川 幹子氏は、受賞者2名について、「二人の研究の分野は大きく異なるが、学術的な観点から極めて優れた業績であるとともに、いずれも人類と『みどり』との関わりについて深く追及され、『みどり』を活かして暮らしていく未来を示した研究として高く評価した」とコメントしている。

 

― 受賞者の功績 ―

【自然環境の保全管理の基本となる景観影響評価方法論の構築と自然環境についての国民への理解と普及への貢献】

熊谷氏は、自然環境の保全管理に関する環境影響評価において、従来の大気・水と生態系の観点に加え、景観という観点を組み込むことを提案するとともに、映像機器によるシミュレーションやコンピューターを用いた予測技術を開発するなど、景観や触れ合いの場としての自然環境への影響を的確に予測・評価する手法を確立した。

また、自然との共生を目指した環境の創造を担う人材の育成のための実践的な教育を進めたほか、生物多様性国家戦略のとりまとめや国立・国定公園の再評価などにも関わり、学術面とともに実践的な取り組みでもわが国の自然環境保全の推進に大きく貢献した。

 

【植物の環境ストレス応答機構の解明と耐性作物の開発】

篠崎氏は、モデル植物のシロイヌナズナを用いて、乾燥や低温、高塩濃度などの環境ストレスの需要や耐性に関わる多くの遺伝子を発見し、複雑な植物の環境ストレス耐性の仕組みの全貌を世界に先駆けて明らかにした。

特に、植物が環境ストレス条件下で耐性を獲得する際の鍵となるマスター遺伝子を同定して、この遺伝子を活用すると植物の環境ストレス耐性が強化されることを証明したことは、国際的に高い評価を得た。さらに、この発見をイネ・コムギ・トウモロコシなど多くの作物に応用し、環境ストレスに強い品種の開発を進めている。

こうした成果は、大規模な干ばつなどの気候変動の影響に対応した将来にわたる人類の食料安定生産や地球環境の保全に大きく貢献するものである。


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