2017年3月29日 障害物を自動で回避するドローン 東大研究グループがメーカーと飛行システム開発

東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻の鈴木真二教授、土屋武司教授、ラビ クリストファートーマス助教らの研究グループは、事務機器・光学機器メーカーの(株)リコーと、ドローン・サービスプロバイダであるブルーイノベーション(株)と共同で、非GPS環境下でも安定して自動飛行するとともに、経路上の障害物を自動で回避できるドローンシステムを共同開発し、飛行試験に成功した。

試験成功により、施設内・倉庫内の警備と危険作業を伴う橋の下やトンネルの中の点検といったGPS信号の受信が不安定、または受信ができない環境下で自律飛行するドローンの安全性が向上。危険作業や目視が難しい場所での作業に大きく貢献することが期待される。研究成果として、共同開発したシステムによるデモ飛行を、3月23日から25日に幕張メッセで開催されたジャパン・ドローン2017で行われ、多くの来場者の注目を集めた。

 

自動飛行、屋内などで課題

ドローンは、安定した姿勢制御、自動飛行という機能を活かして、構造物点検、警備・監視、測量、物流など、さまざまな業種のサービスに幅広く活用され始めている。活用が進んでいるドローンだが、自動飛行するためには〝ユーザーが飛行経路を事前に設定する〟ことが必要。

また、ドローンは自身の位置(自己位置)を把握し、飛行経路に沿うように自動飛行制御を行う自己位置の把握には通常、GPSを利用するが、橋の下やトンネルの構造物の点検、また屋内や建物付近での警備や物流といった用途にドローンを活用する場合、GPS信号の受信が不安定、または測位の誤差が大きいため、正確な飛行ができず、墜落の危険性がある。さらに、②経路上に予期せぬ障害物がある場合、避けることができない―といった課題があるため、自動飛行はできず、目視内での手動操縦に頼らざるを得ない。

 

3次元地図を創出

研究グループは昨年3月に、加速度計、ジャイロなどにより移動体の3次元空間での移動を計測する「IMUセンサー」と、複数のレンズを使用してステレオ画像処理を行うカメラである「3Dビジョンシステム」を融合することにより、非GPS環境下で自己位置推定を行い、自動飛行が可能なドローンの飛行試験に成功したことを発表した。東大が開発した安定した姿勢制御が可能なドローンシステムに、リコーが開発した3Dビジョンシステムを搭載したもので、移動推定をすることにより自己位置推定が可能な超広角ステレオカメラによって、非GPS環境下でも安定した自動飛行が可能なドローンシステム。

今回、この超広角ステレオカメラが移動推定に加えて、飛行している経路の3次元地図を創り出すことを同時に行うシステムを完成させた。予定していた飛行経路に出現した障害物を検出し、ドローンが障害物を回避するという自動制御をすることにより、障害物の自動回避と自動飛行に成功した。

さらに、リコーは産業用ステレオカメラなどの3Dビジョンセンサーを商品化しており、この技術を今回開発したドローンシステムへ応用した。

 

トンネル点検などで活用期待

ここ数年、ドローンの活用は重要性を高めており、さまざまな取り組みが行われている。同システムの開発は、ドローンを有効利用する上で、学術的、工学的にも極めて重要であると考えられ、今後は、さらなる性能・信頼性向上のために現場での実証試験を行うことが必須となる。

危険を伴う高所、橋の下、トンネルの中の点検などで、障害物を自動回避しながら自動飛行できるドローンを用いることで、高所・危険作業現場での安全な精密点検が可能になり、ドローンの社会的有効利用に拍車がかかることが期待される。


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