2017年7月19日 防災研と東大がスリランカで緊急支援 洪水対策で高度科学技術生かした防災情報を提供

今年5月下旬にスリランカで発生した洪水被害(死者・行方不明者300名超)を受けて、同国政府からの要請に基づき、日本政府から国際緊急援助隊が派遣され、国立研究開発法人土木研究所も研究員の派遣により協力を行った。

さらなる洪水被害の発生が懸念されるスリランカでは、今後、日本の高度な科学技術を活かした防災情報が有効と考えられることから、文科省のデータ統合・解析システム(DIAS)を研究開発してきた東京大学地球観測データ統融合連携研究機構(EDITORI)と、洪水観測、予測研究を推進している土木研の水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)が協力して、同国におけるリアルタイム洪水予測等の情報提供を試行的に実施するとともに、活用のための研修や人材育成などを行うこととなった。

 

東大EDITORIA、危機管理への情報を創出

DIASは、平成18年に開発が始まった文科省のデータ基盤の開発・利用プロジェクト。多種多様かつ大容量な観測や予測のデータを収集、蓄積するとともに、社会経済情報などとの融合を行い、地球規模の環境問題や大規模自然災害等の脅威に対する危機管理に有益な情報へ変換し、国内外に実時間で提供するデータ基盤。22年度にはプロトタイプの開発が完了し、27年度に社会的、公共的インフラとして実用化するためのさらなる高度化・拡張を図り、28年度からは実運用に向けた研究開発が実施されている。

また、東大のEDITORIAは、東大内の地球観測分野、情報科学技術分野、災害や農業などの公共的利益分野を担う部局の研究グループが部局を超えて相互に協力して、地球観測データの統合的利用を研究する組織として18年4月に設立された。文科省の委託を得てDIASを開発し、不均質な情報源からの多様で大容量の地球観測データを効果的に利用して、地球環境の理解を深め、予測能力を高め、危機管理や資源管理等における健全な政策決定につながる情報を創出している。

ICHARMは、ユネスコの後援を受ける国際センターとして、18年3月に土木研究所(当時)内に設置された。国内外の水関連災害に関する研究・研修等を行っており、特に日本で培われた技術や経験を生かして、雨量や洪水流量、河川流域での氾濫、衛星観測データによる浸水区域図等に関する予測・解析といった研究を進めている。

 

求められるのは「情報」

わが国では、今月の九州豪雨で20人を超える犠牲者を出したが、スリランカでも今年5月24日頃から断続的に降り続いた雨によって、多いところでは一日最大雨量が550mmを超える記録的な豪雨となった。

これにより、スリランカ国南西部を流れるカル川流域を中心として大規模な洪水・土砂災害が発生し、スリランカ政府の6月3日現在の発表によると同国全体で300名を超える死者・行方不明者、1万8000戸を超える家屋被害が報告されている。

今回の洪水被害を受け、日本政府はスリランカ政府からの要請に基づき、6月2日から11日にかけて国際緊急援助隊を派遣し、土木研も同所の主任研究員を隊員として派遣することで協力を行った。

スリランカは、依然として洪水期の最中にあり、今後もさらなる洪水被害の発生が懸念されるため、日本の高度かつ最新の情報科学技術を最大限に活用した、再度災害の防止と災害の応急復旧につながる情報が必要とされている。

EDITORIAとICHARMは、今回のスリランカでの洪水被害に鑑み、EDITORIAが開発してきたDIAS上に、ICHARMが実施してきた洪水に関わる気象、水文モデル等を実装することによって情報提供等を行い、同国での効果的な洪水対策に活用してもらうこととしている。


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