2018年8月27日 野球部の練習時間、他の運動部の2倍 「感覚にズレ」求められる指導方法の改善

高校野球部の休日の練習時間は7.7時間と長く、他の運動部の約2倍―。〝スポーツ・フォー・エブリワン〟を推進する公益財団法人笹川スポーツ財団(SSF)が行った調査により、あらためて高校球児が〝部活漬け〟となっている現状が浮き彫りとなった。一方で、実際の野球部員は練習時間の長さに対する不満は少なく、他の運動部員と感覚に「ズレ」があることもわかった。長時間のトレーニングに伴う怪我や熱中症などが指摘されていることから、SSFでは、こうした現状を是正するためには、長時間練習の弊害を認識し、時間短縮に努めるなど、指導方法の改善の必要性を強調している。

SSFが今年3月に刊行した4歳から21歳のスポーツライフに関する調査結果『子ども・青少年のスポーツライフ・データ』で掲載したもの。同調査結果では、中学生・高校生の学校運動部活動に関する調査結果を記載しており、今回、運動部ごとの活動状況を分析するなかで、高校野球部員の練習時間の長さが明らかになった。

全国高校野球選手権大会が100回目を迎え大きな盛り上がりを見せる一方、今年3月にスポーツ庁が「運動部活動のあり方に関する総合的なガイドライン」を発表。野球部だけでなく、本格的に部活動改革の指針を示した。調査分析は、ガイドラインを踏まえて、学生野球を維持・発展させるためには何が必要か、という観点から、野球部員の練習時間に対する意識構造をもとに考察したもの。

 

   「スポーツ庁指針」を大きく超過

中学校期と高校期の活動日数・活動時間を分析すると、スポーツ庁の指針にある「休養日は週2日・活動時間は平日2時間程度・休日は3時間程度」という範囲を大きく超えていることがわかった。野球部に注目すると、中学生週当たりの平均活動日数は6.10日、平日の1日あたりの平均活動時間は2.43時間、休日は5.71時間で、野球部以外の週当たり5.63日、平日2.22時間、休日3.65時間を上回っている。

また、高校生野球部員は週当たりの平均活動日数は6.57日、平日の平均活動時間は3.43時間、休日は7.70時間。野球部以外は週当たり5.73時間、平日2.58時間、休日3.74時間であったことから、野球部の活動日数・活動時間は平均よりも明らかに多く、かつ長い。

特に高校期の休日の活動時間は、他の運動部と比較して約2倍と、著しく長くなっている。

SSFでは、野球部員の部活動に対する悩みや不満についても聞いた。「遊んだり勉強する時間がない」ことに不満を感じている部員は、中学生28.6%、高校生43.5%。「休日が少なすぎる」ことに不満を感じている部員は中学生38.1%、高校生52.2%で、不満を持つ部員は一定数存在することが確認できた。

注目すべきは、「練習時間が長すぎる」ことに不満を感じている野球部員は、中学生14.3%、高校生21.7%と低いこと。練習時間は他の運動部よりも明らかに長いにも関わらず、野球部員はあまり不満を感じていないようすが読み取れる。

そこで、SSFでは、野球部と野球部以外の運動部での練習時間の長さに対する不満の有無と実際の活動時間を比較した。野球部で練習時間の長さに不満がある者の平均活動時間(休日)は8.36時間で、野球以外の運動部での練習時間の長さを感じている者の4.17時間よりも4.19時間長いことが判明した。

加えて、野球部で練習時間の長さに不満を感じていない者の平均活動時間(休日)は6.02時間で、野球以外の運動部で不満を感じている者の4.17時間よりも1.85時間長かった。平日の活動に関しても同様の傾向がみられ、野球部員の練習時間の長さに対する感覚は、他の運動部員と比較して異なっており、練習時間に対する〝感覚のズレ〟が示唆された。


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