2022年4月14日 遺伝・ゲノム情報による差別の防止へ 日本医学会・日本医師会が法整備を要請

個人に合った治療などを可能にする「ゲノム医療」について、日本医学会と日本医師会は6日、診療段階で得られた遺伝情報によって不当な差別や社会的不利益を防ぐための法整備が必要だという声明をまとめた。

ゲノム医療は個人の遺伝・ゲノム情報を調べることで、個々人の体質や病状ごとに、効果的・効率的な疾患の診断や治療、予防が可能になる技術。特にがんや難病の分野では、既に実用化が進んでいる。

一方で遺伝・ゲノム情報は、生涯変化せず、子孫にも受け継がれる「究極の個人情報」という側面も持つ。諸外国では、2000年代から医療以外の分野における遺伝・ゲノム情報の取り扱いに関するルールを策定。さらに、ゲノム医療の実装に伴い、その見直しが議論されてきた背景がある。これに対して日本の対応策は、個人情報の取得や第三者提供に本人同意の取得を求めるという個人情報保護法のみにとどまっている。

そのため声明文では、「もしも、個人の疾病リスクなどが不適切に扱われた場合、患者本人やその血縁者が保険や雇用、結婚、教育など人生の様々な場面で不当な差別を受けたり、社会的不利益を被ったりしかねない」と危惧。加えて、法整備が不十分のままでは、国民がゲノム解析を伴う医学研究への参加や遺伝学的検査の利用を控えることも考えられ、日本国内での遺伝情報・ゲノム情報を用いた新規医薬品開発やゲノム医療の導入の障壁となることも懸念されるとした。

そこで両学会は、国や監督官庁、遺伝情報・ゲノム情報を取り扱う可能性のある保険会社等の事業者及び関係団体に対して、

1.国は、遺伝情報・ゲノム情報による不当な差別や社会的不利益を防止するための法的整備を早急に行うこと、及び関係省庁は、保険や雇用などを含む社会・経済政策において、個人の遺伝情報・ゲノム情報の不適切な取り扱いを防止したうえで、いかに利活用するかを検討する会議を設置し、我が国の実情に沿った方策を早急に検討すること。

2.監督官庁においては、遺伝情報・ゲノム情報を取り扱う可能性のある保険会社等の事業者および関係団体に対し、遺伝情報・ゲノム情報の取扱いに関する自主規制が早急に進むよう促すとともに、その内容が消費者にわかりやすく適正なものとなるよう、指導・監督を行う仕組みを構築すること。

3.遺伝情報・ゲノム情報を取り扱う可能性のある保険会社等の事業者および関係団体は、遺伝情報・ゲノム情報の取扱いについて開かれた議論を行い、自主的な方策を早急に検討し公表すること。

を要請した。

同日の会見で日本医学会の門田守人会長は、「この問題は人間の存在にも関わる大きな問題だ」と発言。門脇孝副会長は、声明を取りまとめた背景について、ゲノム医療が保険適用される可能性も出てきたこと、遺伝子の面から将来のリスクが早い段階で予想できるようになったことを受けて、社会環境の整備を早急に進めなくてはならなくなったと説明した。


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