2020年11月17日 進む「草食化」、東大研究Gが分析 30代女性で顕著な傾向、10年で約3倍に

ここ数年来指摘されている人々の「草食花」。恋愛や異性との交際に興味を有さないこうした現状はすっかり社会現象として定着している。東京大学の研究グループが行った分析によると、過去30年間の間に、未婚かつ異性と交際していない人の割合は着実に増加しており、特に30代女性が恋愛や結婚に奥手であることが明らかとなった。独身や恋愛をしていない女性の数を1995年と2015年を比較すると、30歳~35歳で約3倍、35歳~40歳で2倍となった。収入が異性との交際に影響を与えていることも判明。研究グループでは、出生率の低下がわが国の未来に大きな影を落としていることを踏まえ、雇用状況等も踏まえた政策立案の必要性を強調している。

 

□低い日本の出生率と交際機会の減少

わが国は合計特殊出生率が世界で最も低い国の一つであり、日本の総人口は今後2060年までに三分の一が減少すると予想されている。低い出生率の要因の一つとして、若年成人が恋愛への興味を失っていること、いわゆる「草食化」が出生率の低下につながっている可能性も指摘されている。

 

□増大する異性と交際をしていない人(シングル)の割合

18~39歳の女性のうち、異性と交際をしていない人の割合は1992年の27.4%から2015年には40.7%と大幅に上昇。年齢グループ別に分析を行うと、年齢階級が上がるほど、異性と交際をしていない人の割合が大幅に増加していることがわかった。1987年から2015年を比較すると、18~24歳では60.0%→65.5%、25~29歳では23.0%→41.9%、30~34歳では11,3%→30.2%、35~39歳では11.22%→24.4%と全年齢層で増加。特に30代を中心に倍増以上の伸びをみせている。

男性では、18~39歳で異性と交際をしていない人の割合は1992年の40.3%から2015年には50.8%に上昇。年齢階級別で変化の状況をみると、18~24歳では71.8%→75.9%、25~29歳→45.8%→55.1%、30~34歳では26.9%→39.3%、35~39歳では20.4%→32.4%という結果となった。

同時期の1987年から2015年の間には、婚姻割合も大幅に減少しているが、その多くはシングル(未婚で交際相手がいない)の増加に繋がっていることがわかった。結婚はしていないが、交際相手はいる人の数はほぼ変わらないことから、結婚をしていない人は、そのままシングルの増加に繋がった。

また、異性との交際自体への興味も下がっている。2015年の調査では、18~39歳のシングルの約半数(女性全体の21.4%、男性全体の25.1%)が異性間交際に関心がないと回答している。

 

□低い収入と学歴が異性との交際関係に関連か

女性では、既婚者やシングルで交際に関心がないと回答した人は、交際中の女性や交際に関心があるシングルに比べて無職である割合が高いことがわかった。さらに、交際に関心が無いと回答したシングル女性は、交際に関心が有ると回答したシングル女性と比較して、高卒以下の学歴が多いことも明らかとなった。

男性でもこの傾向は顕著で、定職についている割合は既婚者、交際中、交際に関心の有るシングル、交際に関心の無いシングルの順で減少している。既婚者ほど定職についている割合が多い。また、年収についても同様の傾向がみられ、既婚男性の年収が最も高く、交際に関心の無いシングルで最も年収が低いことがわかった。

わが国では、収入と男性の婚姻状態は関連してことがすでに指摘されており、過去数十年にわたる不安定な雇用状況が、国内での低い婚姻率・出生率に関連しているとみられる。同様に、今回の研究からも雇用や収入状態が男性とっての異性との交際機会の有無にも影響していることが明らかになった。

 

□政策介入検討も一案

日本政府は、婚活イベント、妊娠出産に関する教育プログラムを実施するなど、ワークライフバランスの推進や子育て環境の整備等さまざまな政策を通じて結婚・妊娠・出産・子育てを奨励しているものの、日本の出生率は低いまま。研究グループでは「雇用や収入状況によってパートナーを探すことに困難を抱えている人に対しては、日本の出生率向上を視野に入れた何らかの政策介入を考えていくことも一案」としている。


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