2022年4月6日 農福連携の取組に関する意識・意向調査 農業者では約6割が「知らなかった」と回答

農林水産省は3月17日、「令和3年度 食料・農林水産業・農山漁村に関する意識・意向調査で実施した「農福連携の取組に関する意識・意向調査」の結果をとりまとめて公表した。それによると、回答した農業者2652人のうち、農福連携を「知っていた」割合は10.2%で、24.5%が聞いたことはあるが内容は知らない、65.3%が知らなかったと答えている。また、回答した1272市区町村のうち、5.3%が農福連携の取組を「積極的に推進していく」、50.5%が「他の施策とのバランスを見ながら推進していく」と回答している。

この調査は、農業と福祉が連携し、障害者等の農業分野での活躍を通じて、農業経営の発展とともに障害者等の自信や生きがいを創出し、社会参画を実現する取組である「農福連携」に対する考え方等を把握し、農福連携の創出に向けた施策の基礎資料とすることを目的としたもの。農業者(2020年農林業センサスにおける農産物販売金額がある個人経営体の世帯主、団体経営体の代表者)4000人、全国1741市区町村を対象に、農福連携の取組状況、農福連携による効果、専門人材の支援、支援制度等が調べられたが、有効回答数はそれぞれ2652人(有効回答率66・3%)、1272市区町村(同73.1%)だった。

 

農業者の農福連携に関する意識・意向

農福連携を知っているかについては、「知っていた」と回答した割合が10.2%、「聞いたことはあるが、内容は知らなかった」が24.5%、「知らなかった」が65.3%だった。

農福連携を知っていた農業者に、農福連携に取り組んでいるかを尋ねたところ、「取り組んでいる」と回答した割合が10.4%、「取り組んでいたがやめた」が3.7%、「取り組んでいない」が85.2%だった。

農福連携に取り組んでいる、または取り組んでいたがやめた農業者に、農福連携における雇用形態について聞いた結果、「障害者就労施設に作業を請け負ってもらっている(いた)」と回答した割合が47.4%、「障害者等を直接雇用している(いた)」が39.5%だった。

農福連携に取り組んでいる農業者の今後の雇用形態についての考えとしては、「雇用形態を増やしたい(変更したい)」と回答した割合が35.7%、「現状のまま」が57.1%だった。

次に、農福連携に取り組んでいる、または取り組んでいたがやめた農業者に、障害者等が担う作業について聞いた結果、「出荷(出荷のための袋詰め、結束等、家畜の競り市場への移動を含む)」と回答した割合が44.7%、「管理作業(施肥、かん水、誘引、芽かき、家畜のエサの配合、排泄物の処理、予防接種など)」と「収穫・調製(採卵含む)」がそれぞれ39.5%だった。

農福連携に取り組んでいる、または取り組んでいたがやめた農業者の、農福連携に取り組んだきかっけについては、「障害者就労施設等からの紹介」と回答した割合が23.7%、「地域の農業者等からの紹介」が15.8%、「行政や農協等からの紹介」が10.5%だった。

また、農福連携に取り組んでいる、または取り組んでいたがやめた農業者に、農福連携に取り組むことによる効果について尋ねたところ、「人材として貴重な戦力になった」と回答した割合が57.9%、「作業の見直しにより効率が図られた」が21.1%、「農作業の労働力確保により営業等の時間が増えた」と「収入が増加した」がそれぞれ18.4%だった。

農福連携に取り組んでいる農業者の取組の継続の意向については、「続けたい」と回答した割合が75.0%、「終了する予定である」が3.6%、「わからない」が10.7%だった。

続いて、農福連携に取り組んでいない農業者については、その理由として、「障害者等を受け入れる設備が整っていないから」と回答した割合が56.1%、「農福連携の取り組み方がわからないから」が24.3%、「障害者等との接し方がわからないから」が17.8%となっている。

また、農福連携に取り組んでいない農業者に、農福連携に取り組む場合に必要なことを質問した結果、「障害者等を受け入れる設備」と回答した割合が55.7%と最も高く、次いで「障害者等を受け入れるための技術指導」が48.7%、「障害者就労施設や障害者等とのマッチング」が47.0%で続いている。

同じく農福連携に取り組んでいない農業者に、障害者等に農作業を依頼する場合に分かると良いことが聞かれたが、「どんな作業ができるのか」と回答した割合が75.2%で最も高く、次いで「作業の質が確保できるかについて」が43.9%、「費用などの金銭面」が43.5%となっている。

 

市区町村の農福連携に関する意識・意向

農福連携推進の意向については、「積極的に推進していく」と回答した割合が5.3%、「他の施策とのバランスを見ながら推進していく」が50.5%だった。一方、「他に重要な施策があるため積極的には推進していない」と回答した割合が12.2%、「推進する予定はない」が27.8%だった。

農福連携を推進する予定がない市区町村に、その理由を聞いた結果、「地域において福祉側から農作業に従事したいという希望がないため」と回答した割合が38.1%と最も高く、次いで「地域において福祉側を受け入れ可能な農業者がいないため」が35.9%、「地域において福祉側の働く場が他に確保されているため」が10.7%だった。

次に、積極的に推進していく、他の施策とのバランスを見ながら推進していく、または他に重要な施策があるため積極的には推進していない市区町村に、農福連携の推進の具体的な取組を尋ねたところ、「関係機関(JA、ハローワーク等)との連携」と回答した割合が53.6%、「パンフレット(広報誌を含む)やホームページによる広報活動」が15.4%、「イベント(マルシェやシンポジウム等)による普及啓発」が6.7%だった。

続いて、農福連携の課題を解決するために必要な取組については、「国による財政支援」と回答した割合が51.5%と最も高く、次いで「専門人材の育成・派遣」が48.9%、「イベント(マルシェやシンポジウム等)による普及啓発」が34.8%だった。

支援制度により感じている効果については、「労働力(就業先)不足の解消」と回答した割合が35.0%、「荒廃農地の解消」が13.4%、「平均工賃の向上」が7.0%だった。

農福連携の取組主体が互いに協力するなどのネットワークの形成事例については、「ある」と回答した割合が10.4%、「ない」が88.1%だった。

ネットワークの形成に向けた考えについては、「増やして行きたい」と回答した割合が15.2%、「増やすことは考えていない」が13.2%、「わからない」が70.0%だった。

市区町村の域を超えた農福連携のネットワークに対する考えについては、「必要と考えており、近いうちにネットワークを形成する予定である」と回答した割合が2.1%、「必要と考えているが、課題があり形成できていない」が12.7%、「今は必要ないが将来的には必要である」が65.1%だった。一方、「必要はない」と回答した割合が18.2%だった。


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