2022年11月15日 農業用パイプラインの耐震性向上技術を開発 埋戻し材に「固結工法」を活用 農研機構ら

農研機構、神戸大学、茨城大学らの研究グループは、農業用水のパイプラインで地震による被害の多い曲管やT字管等の耐震性を向上させるため、埋戻し材の一部に「固結工法」を用いた技術を開発し、その効果を振動模型実験により検証した。

農業用パイプラインは、大規模な地震の際に大きな被害を受けるが、特に多い被害の内容は、曲管やT字管等のスラスト力が作用する箇所での継手部のパイプの抜け出し。通常時には、スラスト力に対して、農業用パイプラインの周辺にある埋戻し材の土圧等によってパイプが保持されているが、地震時にはこの埋戻し材が液状化して土圧が低下するため、パイプが動いて継手部の抜け出しが生じる。

今回の研究では、①セメント等の材料を埋戻し材である砂質土と混合させた固化処理土を用いる、あるいは②砂質土に地表面からの薬液等のグラウト材を注入することで、曲管やT字管等のスラスト力が作用する箇所の耐震性を向上させる「固結工法」を開発した。また、振動模型実験でその効果が確認されている。

スラスト力が作用する方向の埋戻し材にこの工法を適用し、地震時の埋戻し材の強度低下を防止することで、パイプの変位が抑制され、継手部が抜け出しにくくなる。新しく管を埋設する際には、①を適用する。一方、既に埋設されているパイプには、②を適用することで、同様の効果が得られる。

この工法は、全国に埋設されている農業用パイプラインを効率的に耐震化する際に活用が期待される。埋戻し材の周辺の地盤そのものが地震時に液状化したり強度低下したりする場合には、この工法が適用できないことに注意する必要がある。

 

スラスト力が作用する方向の埋戻し材に固結工法を適用

農業用水のパイプラインは、昭和40年代から本格的に整備が始まり、基幹的な施設の延長は約1万2000kmに及ぶ。河川やダム等から取水した水を水田や畑地まで送水するため、直線のパイプだけでなく、曲管、T字管、片落管(口径が変化する管)等の様々な形状のパイプが利用されている。

このうち、水の流れの向きが変わる、曲管、T字管、片落管等には、内部の水の圧力によってパイプを動かそうとするスラスト力が作用する。通常は、このスラスト力に対してパイプ周辺の土圧やパイプと土の摩擦力等によってパイプが動かないよう力のバランスが保たれている。スラスト力が土圧等よりも大きく見込まれる場合には、コンクリートブロック等を設置して、パイプが動かないようにしている。

しかし、大規模な地震の際には、埋戻し材の液状化等による土圧の低下や、パイプ内部の水が地震によって動くことによるスラスト力の一時的な増加等によって、力のバランスが崩れてしまい、パイプが動いて継手部で抜け出し、漏水する被害が頻発している。

漏水事故は、営農活動に支障をきたすだけでなく、パイプが道路下に埋設されている場合は、高圧水による道路の陥没で交通障害等の二次被害を引き起こすことがある。そのため、地震時のパイプの変位を抑制し、被害を軽減する工法が求められている。

そこで農研機構は、共同研究機関とともに、スラスト力が作用する方向の埋戻し材に固結工法を適用し、地震時の埋戻し材の強度低下を防止することで、曲管やT字管等の耐震性を向上する技術を開発した。固結工法は、パイプの浮上防止等を目的に埋設管の埋戻し材として近年利用されているが、スラスト力対策としての有効性が不明だったため、今回、振動模型実験によりその効果の検証が行われた。

 

振動模型実験で有効性を検証

今回開発された工法では、曲管やT字管周辺のスラスト力が作用する方向の埋戻し材に固結工法を適用する。新たに埋設するパイプの埋戻し材には固化処理土を用い、既に埋設されたパイプの埋戻し材には地表面から薬液等のグラウト材を注入する。これにより、埋戻し材に粘着力が付加されて、地震時の強度低下を防ぐ。

現地盤(埋戻し材の周辺のもともとある地盤)が液状化や顕著な強度低下を起こさない箇所では、スラスト力が作用する方向の埋戻し土に固結工法を用いることで、管の変位を抑制し、継手部のパイプが抜け出す被害を軽減できる。

固結工法の有効性を検証するために行われた振動模型実験では、条件として、現地盤は粘性土、埋戻し材は砂質土とし、埋戻し材が地震時に強度低下する状況が再現された。地中に埋設したT字管に水圧を負荷しスラスト力を与えた状態で、地震動を加えたところ、固結工法を適用しない場合は、地震によりパイプが現地盤に接触するまで大きく動いた。一方、固結工法を適用した場合、大きな地震(深度6強に相当)でもパイプはほぼ動かないことが確認された。

 

大規模な地震の際のパイプの被害を最小限に

今後、全国に埋設されている農業用水のパイプを耐震化する際に、固結工法を活用することができる。こうした技術を用いることで、大規模な地震の際のパイプの被害を最小限に抑えることが望まれる。


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