2019年1月15日 観測累積200万データを突破 国際協力のアルゴ計画で比類なき海の知見

気象庁と国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、自動観測フロート(アルゴフロート)により、全世界の海洋状況を常時監視・把握するシステムの構築を目指す国際プロジェクト「アルゴ計画」において、海洋内部の観測データ数が累積で200万データを突破したことを明らかにした。かつてない規模のデータセットにより気候変動に関する数多くの知見が得られ、海洋状況の監視や季節予報の予測システムの改善が進んでいるという。

アルゴ計画により収集されたデータは、即時的に国際交換・公開され、各国の気象・海洋機関が天気予報や季節予報、海洋の状況の監視・予測に利用するとともに、全世界の科学者が調査・研究に利用している。

観測データ数の累積が200万データを突破したのは昨年11月。2000年にスタートしたアルゴ計画の開始以前に人類が蓄えたデータの4倍に当たる。このかつてない規模のデータセットにより気候変動に関する研究が進展し、得られた数多くの知見は、世界の気候変動対策の自然科学的根拠となっている。

地球温暖化をはじめとした地球環境の変化による人間社会への影響が顕在化しつつあるなか、海洋をはじめ地球環境を監視する重要性を増している。気象庁やJAMSTECは、関係省庁・機関との連携や国際協力のもと、地球環境の監視と変動メカニズムの解明を進めていく。

アルゴ計画は、浮力を調整する機能が内蔵された「アルゴフロート」を展開することで地球全体の海洋変動をリアルタイムで捉えることをねらいとするもので、世界気象機関、ユネスコ政府間海洋学委員会などの国際機関と日本など26か国が参加している。全世界で稼働中のアルゴフロートは3964台、そのうちわが国は世界で4番目に多い150台を運用している。

アルゴフロートは海中に投入されるとまず、予め設定された通常1000㍍の漂流深度まで沈降する。通常10日間程度の一定期間その深さで漂流した後、いったん2000メートルの観測最深層まで降下してから海面に向かって浮上する。

フロートは最深層から海面に浮上する間に水温や塩分などの鉛直分布を観測し、海面浮上後にアンテナから電波を発射して衛星経由で観測データの伝送を行い、通信が終わると、再び漂流深度まで沈降する。アルゴフロートはこうした沈降/浮上サイクルを約140回、通常の設定で3~4年にわたって繰り返せるように設計されている。

 

エルニーニョなどの精度改善

アルゴフロートのデータをはじめとする海洋観測データを観測後ただちに取り込んで解析する海洋データ同化システムにより、海洋の状況の監視が行われている。海洋データ同化システムの出力は気象の数値予報モデルの海面境界値として、気象庁の季節予報にも利用されており、アルゴフロートのデータを利用することでエルニーニョ予測や季節予報の精度が改善している。

アルゴフロートのデータは、海洋データ同化システムの入力として即時的に用いられるだけでなく、システムの開発・改善のための入力データ・検証用データとしても利用されている。


株式会社官庁通信社
〒101-0041 東京都千代田区神田須田町2-13-14
--総務部--TEL 03-3251-5751 FAX 03-3251-5753
--編集部--TEL 03-3251-5755 FAX 03-3251-5754

Copyright 株式会社官庁通信社 All Rights Reserved.