2021年6月2日 航空機エンジン向け2件着手 国産材料の研究開発と競争力強化目指す

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(石塚博昭理事長、NEDO)は航空機エンジンに使われる国産材料の競争力強化に向け、革新的な合金開発や材料データベースの構築に取り組む2件の研究開発事業に着手した。

航空機の燃費改善や環境適合性向上の要請に応えるため、マテリアルズ・インフォマティクスなどの情報科学を活用した航空機エンジン向け高機能材料に必要なデータ駆動型の合金探索システムを開発する。また、国産材料の競争力強化に向け、関連企業や研究機関などと連携し、航空機用エンジンに関する材料データの蓄積や強度評価、性能評価などに必要なデータベースを構築する。これを、2040年までに92.8万トンのCO2削減につながるエンジンの実用化につなげ、日本の航空機産業の国際競争力を強化する。

近年の世界的なCO2排出量削減の動向を受け、各航空会社はより燃費のよい旅客機の導入を進めている。航空機産業においても燃費を重視した、より性能の高い航空機および航空機エンジンの製造が求められ、技術の獲得競争が激化している。

特に航空機エンジンは欧米企業を中心とした寡占状態で、高い安全性の要求と品質保証体系、航空当局の認証管理など、参入障壁の高い市場といわれている。こうした中、日本の航空機エンジン産業は国際共同開発への参画を通じて事業規模を拡大してきたが、さらなる事業拡大には技術革新によって優位性を維持する必要があるほか、航空機エンジンの設計段階から開発に携わることで欧米企業の戦略的なパートナーとなることが不可欠。こうした背景から、NEDOは航空機エンジン向けの革新的な合金開発や材料データベースの構築を目指し、新たに2件の研究開発事業に着手した。

航空機の燃費改善や環境適合性向の要請に応えるため、マテリアルズ・インフォマティクスなどの情報科学を活用した、航空機エンジン向け高機能材料に必要なデータ駆動型の合金探索システムを開発する。また、国産材料の競争力強化に向け、関連企業や研究機関などと連携し、航空機エンジンに関する材料データの蓄積や強度評価、性能評価などに必要なデータベースを構築する。

今回、新たに研究開発に着手したテーマは以下の2件。

● 革新的合金探索手法の開発:国立研究開発法人産業技術総合研究所、筑波大学、一般財団法人金属系材料研究開発センター、JX金属(株)

● 航空機エンジン用評価システム基盤整備:国立研究開発法人物質・材料研究機構、(株)IHI、川崎重工業(株)、三菱重工航空エンジン(株)、(株)本田技術研究所、三菱パワー(株)

「革新的合金探索手法の開発」=航空機エンジン向け材料は、高温、高圧という過酷な環境に耐えることが必要であり、複数の金属元素を適切に組み合わせることで、従来製品よりも軽量で、耐熱性、耐摩耗性、熱伝導性、導電性などに優れた「全く新しい合金」の開発が可能となる。合金特性は金属元素の組み合わせとプロセス条件で決まるが、その組み合わせは膨大な数に上るため、従来型の実験方法では天文学的な時間が必要となる。そこで合金探索に必要な良質のデータを大量かつ高速に収集し、マテリアルズ・インフォマティクスを利用して望む特性を有する合金の探索時間を大幅に短縮するデータ駆動型の革新的な合金探索手法を開発することで、航空機エンジンへの適用可能性を模索する。

「航空機エンジン用評価システム基盤整備」=最終製品として求められる安全性・信頼性の高さ故、航空エンジンは材料の段階から厳しい認証基準などが求められる。国産材料の競争力を高め、材料データを効率的に取得するために企業や研究機関などと連携し、国内にデータベースを整備する。また、構築したデータベースに基づいて実際に部材を製造し、性能評価試験などを実施する。


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