2019年1月24日 私大の耐震化率9割止まり 非構造部材を中心に集中的な対策が必要

文部科学省が実施した平成30年度私立学校施設の耐震改修状況等調査の結果、私立大学・短大・高専の耐震化は着実に進んできているものの、耐震化が行われていない私立学校施設がいまだ多く残っていることが明らかになった。

学校施設は災害発生時にも学生らの大切な命を守り、地域の避難所としての役割をも果たすことから、安全性を確保することはすべての学校施設が備えるべき基本的な条件。

近年発生した地震では、耐震化が未完了の建物における構造体への甚大な被害や、非構造部材への多数の被害が生じており、発災の時間帯によっては人命に関わる甚大な被害へと繋がる恐れがある。

文科省では、次回の調査結果公表に当たっては、大学等の各法人の計画に基づく耐震化率の推計値を盛り込む予定としており、全国の私学法人に対し、学校施設の耐震化完了に向けた一層の取組を進めるよう要請している。

私学施設の耐震改修状況調査によると、大学等の耐震化率は91.6%と、前年度から1.3ポイント上昇しているものの、国立大学の98.7%と比べて遅れている状況。このため、昨年暮れに閣議決定された「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」では、2020年度までの3年間で集中的に実施すべき対策の一つとして、『学校施設等の構造体の耐震化に関する緊急対策』を打ち出し、私立学校施設に関する達成目標として「学校設置者が2020年度までに計画している倒壊し又は崩壊する危険性が特に高い施設の耐震化を概ね完了」することとし、30年度第二次補正予算案及び31年度予算案に予算を計上している。耐震改築事業への補助制度についても、2020年度までの延長を行う予定。

 

文科省「耐震化に最優先で取り組むよう」要請

文科省は、「一部の法人においては、耐震化以外の事業を優先しているのではないかといった指摘を各方面から受けている」と言及。各法人において「学生等の安全を早急に確保するため、引き続き耐震化の促進に向けて最優先で取り組むよう」要請している。

耐震改修調査では、非構造部材に係る調査結果として、耐震点検実施率は42.1%、点検を実施した学校のうち対策が完了した学校は19.8%にとどまっていた。重要インフラの緊急対策では、学校施設の達成目標として「緊急点検の結果を踏まえ、屋根や外壁、内壁、天井等の耐震性及び劣化等に課題があり、対策の緊急性の高い学校施設等を全て改善する」としており、予算計上が行われている。

構造体の耐震化が完了している大学等の学校施設であっても、非構造部材の劣化・損傷が、人命に関わる甚大な被害へと繋がる恐れがある。文科省では、これまでも学校施設の維持管理の徹底を要請してきているが、今回の調査結果を踏まえ、耐震点検を実施していない学校は早期に点検を行うとともに、是正が必要と判断された箇所については、応急的な安全対策を行い、早期に是正するよう要請している。

学校施設の耐震化には多大な経済的負担がかかるとともに、耐震化後は長期間にわたって施設を運用することになることから、各法人において中長期的な視点で耐震化計画を具体的に策定していくことが必要。すでに耐震化計画を策定した学校法人においても、法人の財務状況などによっては改築に比べて経済的負担の小さい耐震補強に変更するなど、これまでの計画を見直し、より現実的な計画とすることも考えられる。

また、旧耐震診断基準の施設の12.0%において、耐震診断が実施されていないことが明らかになった。耐震診断の結果によっては、対策費用も大きく差が生じることから、より確実な耐震化計画とするためにも耐震診断の早期実施を進める必要がある。


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