2017年7月3日 福島県の国有林火災跡地の実態調査結果 土壌とともに放射性物質が流出する可能性は低い

農林水産省は、今年4月29日に福島県浪江町の国有林で発生した林野火災の跡地における空間線量率等の実態調査の結果を公表した。今回の調査では、燃焼箇所や非燃焼箇所で空間線量率に明確な差は見られなかったほか、土壌等とともに放射性物質が流出する可能性は低いと考えられることが分かった。

今回の調査は、林野火災跡地の空間線量率や樹皮等の放射性セシウムの濃度等を把握することを目的としたもの。5月17日、18日の両日に、復興庁、環境省、(国研)森林研究・整備機構森林総合研究所、福島県、浪江町、双葉町、双葉地方広域消防本部との連携の下、福島県浪江町・双葉町の国有林内で行われた。

 

空間線量率などを測定・比較

調査では、延焼区域内の燃焼箇所や非燃焼箇所、延焼区域外の空間線量率が測定されたが、明確な差は見られなかった。

また、現地では火災後にまとまった降雨があったが、土壌浸食等によって落葉層や土壌が移動した状況は確認されなかった。しかし、火災によって下草が失われ、土壌浸食が起こりやすくなっているとみられ、直ちに土壌流出を防止する対策が必要ではないものの、引き続き注意していく必要がある。また、燃焼により樹皮や落葉層などに含まれるセシウムが溶出しやすくなることも考えられるが、仮に雨水等に溶けて土壌に流入したとしても、セシウムは土壌に吸着されやすく、森林から渓流等に流出する可能性は低いと考えられる。

さらに、火災によって幹の一部が炭化したアカマツ3本、スギ1本について、燃焼部と非燃焼部の樹皮のセシウム濃度等が測定されたが、アカマツ2本は燃焼部が非燃焼部に比べて、樹皮現存量(単位面積あたりの乾重量)、セシウム濃度(単位重量あたりのセシウム量)、セシウム蓄積量(単位面積あたりのセシウム量)のいずれも低くなっていた。しかし、アカマツ1本とスギでは、樹皮現存量、セシウム濃度、セシウム蓄積量のいずれも燃焼部と非燃焼部の差はほとんどなかった。アカマツ2本のセシウム蓄積量が低下したのは、火災によりセシウム濃度の高い樹皮表面部分が落下したか、樹木ごとの火災前のセシウム濃度にばらつきがあったことなどが原因と考えられる。

また、アカマツ林内2ヵ所、スギ林内2ヵ所について、燃焼箇所と非燃焼箇所の落葉層(土壌表層の堆積有機物層)のセシウム濃度等が測定されたが、いずれの箇所でも燃焼箇所が非燃焼箇所に比べて濃度が高かった。セシウム蓄積量については、アカマツ林内1ヵ所、スギ林内2ヵ所で燃焼箇所が非燃焼箇所に比べて高くなっていたが、アカマツ1ヵ所では燃焼箇所が非燃焼箇所に比べて低くなっていた。この1ヵ所については、落葉層の現存量の違いが大きかったことが考えられる。これらのことから、セシウム濃度は、燃焼により有機物量が減少してセシウムの濃縮が起きたことで高くなったと推定される。一方、セシウム蓄積量については、落葉層の現存量にばらつきがあり、明確な傾向はつかめなかった。

さらに、同じ箇所について落葉層直下の土壌のセシウム濃度等が測定されたが、土壌現存量、セシウム濃度、セシウム蓄積量のいずれも燃焼箇所と非燃焼箇所の違いに関して明確な傾向はつかめなかった。

 

今後も継続して状況の把握を実施

今回の火災の延焼面積は約75ヘクタール、林野火災としては大規模だったが、一部で樹木の燃焼もあったものの、主に林床の落葉層を中心に燃焼したものであり、燃焼の程度は軽度と考えられる。

今回の調査では、土壌や落葉層等とともに放射性物質が流出する可能性は低いと考えられるが、今後とも関係機関と協力して土壌流出の兆候や植生回復の状況等を把握していくとしている。


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