2018年5月29日 畜産業・酪農がもたらす環境負荷はより小さい 現場実測データに基づき温室効果ガス排出係数を見直し

農研機構と共同研究機関は、豚・牛の尿汚水処理で発生する温室効果ガス(一酸化二窒素、メタン)の実測に基づき、汚水に含まれる窒素や有機物1gから排出される一酸化二窒素とメタンの量を示す「一酸化二窒素排出係数」と「メタン排出係数」を算出し直した。その結果、現行では一酸化二窒素の排出係数が過大に見積もられていることが分かった。最新の排出係数を用いると、豚・牛の尿汚水処理に伴う温室効果ガス排出量(一酸化二窒素とメタンの合計量)の推計値は、現行の排出係数を用いた推定値と比べて年間60万トン(41%)少なくなった。今回算出された一酸化二窒素とメタンの排出係数は、国の新たな基準として採用される予定だ。

 

 尿汚水の浄化処理に由来する温室 効果ガスについて排出係数を見直し

畜産由来の温室効果ガス排出量は、日本の農業由来の温室効果ガス排出量の41%を占めると推定されている。このため、より環境負荷の少ない家畜生産体系の開発が求められている。

一方、現在の家畜排せつ物由来の温室効果ガス(一酸化二窒素、メタン)排出量は実験室内データに基づいて算出された排出係数を用いて推計されており、実際の値とのかい離が懸念され、まずは現場の発生量の正確な把握が必要だった。

この点について農研機構では、昨年、養鶏について既に見直しを行っている。今回は、それに続いて、共同研究機関と協力して豚と牛の生産における排せつ物管理由来の温室効果ガス排出量について、その多くを占める「尿汚水の浄化処理に由来する温室効果ガス(一酸化二窒素、メタン)」の排出係数を、実際の浄化施設で測定したデータをもとに見直した。

 

 一酸化二窒素とメタンの排出係数 いずれも現行の見積りは過大

今回の研究では、国内の家畜生産施設(豚5ヵ所、乳牛1ヵ所)に設置された実用規模の尿汚水浄化処理施設で、排出される温室効果ガスや汚水中の有機物濃度、窒素濃度等の実測が行われた。

次に、得られたデータを元に、養豚の浄化処理と乳用牛・肉用牛の浄化処理における一酸化二窒素とメタンの排出係数を算出し直した。その結果、一酸化二窒素の排出係数は、どちらの場合も現行(改定前)では過大に見積もられていることが分かった。一方、メタンの排出係数はどちらの場合も改定後の方が大きくなった。

さらに、排出係数とこの浄化処理区分で扱われる有機物量と窒素量から、養豚と乳用牛・肉用牛の浄化処理に伴う温室効果ガス排出量が推定された。最新の排出係数を用いると、養豚と乳用牛・肉用牛の浄化処理に伴う温室効果ガス排出量の推定値は、現行の排出係数を用いた推定値と比べて、年間60万トン少なくなることが分かった(41%減少、二酸化炭素に換算した算定値)。

また、この成果により、養豚や乳用牛・肉用牛生産では、実験室内のデータに基づく算定より環境への負荷が小さくなっていることが分かった。

 

 より環境負荷の少ない家畜生産 体系の開発への貢献に期待

今回算出された一酸化二窒素とメタンの排出係数は、豚の浄化処理に関しては2017年度版の「日本国温室効果ガスインベントリ報告書」に採用された。また、牛の浄化処理については2018年度版の同報告書に採用される予定。これらの排出係数は、今後、わが国において養豚や乳用牛・肉用牛生産がもたらす環境影響評価の算定に用いられる。

また、今回の研究成果により得られた温室効果ガスの排出係数は、削減すべき取り組むべき優先順位の高い排出源を特定するためにも、現状を正確に示す値として、より環境負荷の少ない家畜生産体系の開発に役立つと期待されている。

さらに、今回算出された温室効果ガスの排出係数は今後、日本と同様の浄化処理を行っているタイ、ベトナム、台湾、韓国、中国といった東南アジア・東アジア各国のインベントリ算定の参考になると考えられる。


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