2020年2月4日 画像の特徴を可視化できる新しいAIを開発 農作物の病害虫診断等での活用に期待

農研機構は、判断の根拠となる画像の特徴を可視化できるAIを開発した。開発されたAIをジャガイモの葉の病気診断に適用した結果、病気の特徴に基づいて、病気が健全かを95%以上の高精度で診断することができた。このAIは、判断の根拠を明確化することができるため、利用者は安心して利用することができる。今後、農業分野を始め、根拠を説明できるAIが必要な広い分野での活用が期待される。

 

学習した特徴を可視化できるAIの開発

近年のAI技術の進展とビッグデータの活用により、農業研究分野でもAIを活用した研究が増えており、成果を上げている。中でも、画像識別技術については、作物、病害虫などの分類に関する課題への適用が進められている。

これまで、精度の向上という面で深層学習などのAIが活用されてきたが、それらのほとんどは学習したネットワークが分類のためにどのような特徴を学習したかを解釈・説明できないブラックボックスモデルだった。学習した特徴が明らかでないと、利用者はAIが正しい特徴を学習したか否かを判断することはできない。人間の意思決定の参考にする場合など、判断の根拠が必要となるケースが次々と出てきており、判断の根拠を説明できるAIへの社会的要請が強まっている。

そこで今回の研究では、学習した特徴を可視化できるAIの開発が行われた。

 

判断の根拠を示した上で病気か否かを判別するAI

今回の研究では、ジャガイモの葉の画像を題材として、判断の根拠を示した上で病気か否かを判別するAIが開発された。

このAIにはオートエンコーダーという技術が用いられており、学習した特徴を可視化できる。

また、植物の葉の画像データから健全、病気、共通部分の特徴を3つの領域に分けて学習により抽出する。今回の研究では、入力のRGB画像のサイズが256×256画素であるのに対して、特徴領域は4096次元とされた。また、特徴領域の1/4が健全、1/2が共通、1/4が病気の領域と定義された。

健全の画像を入力する場合は病気の特徴領域を使用せず、病気の画像の場合は健全領域を使用せず、それぞれの特徴が対応する特徴の部分領域へ反映されるように条件付きで学習を行う。学習の基準は、入力画像と生成画像の差で、差が小さくなるようにオートエンコーダーを学習させる。

さらに、病気や健全の特徴のみを抽出し、病気/健全葉を判別するAIに入力することで、入力画像が病気/健全葉のどちらであるかを判定することができる。

研究の中では、このAIについて、ジャガイモで2種類の病気について、健全な葉の画像400枚、病気の葉の画像827枚により深層学習が行われた。176枚の画像を用いて精度検証した結果、2種類の病気の両方で95%以上の高精度で診断することができた。また、ピーマン、トマトの各1種類の病気についても同様の学習を行い検証した結果、病気/健全葉の識別精度は90%を上回った。

このほか、病気葉を入力画像として、健全の特徴を使用せず生成した画像と、病気の特徴を使用しない画像を比較した結果、後者では病気の特徴が消えた画像が生成された。この結果から、特徴領域が病気か否かを説明するものであることが確認できた。

 

より幅広い分野での活用にも期待

この病気診断プログラムは、病気株の検出が特に重要となるジャガイモの原原種(元だね)ほ場等への導入が検討されている。さらに、イネの重要害虫であるウンカ類の種類判別への適用が試みられている。

また、このAIは、学習次第で様々な活用が可能。今後、農業分野を始め、根拠が説明できるAIが必要な広い分野での活用が期待される。


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