2018年3月23日 消灯後のスマホ使用などが影響 筑波大教授が学生アスリートの睡眠で調査

アスリートにとって「睡眠」はコンディションを整え、大会などで好成績をあげる上で必要なものとなっているが、深夜のアルバイトや消灯後の携帯電話、スマートフォン使用といったことが睡眠障害の要因となっていることが、筑波大学教授らの調査研究で明らかとなった。筑波大体育系の武田文教授、門間貴史特任助教、徳山薫平教授と国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)の佐藤誠教授らの研究グループが、900名以上の学生アスリートのデータから、睡眠障害と生活習慣・競技活動・競技ストレッサー・メンタルヘルスとの関係について分析したもの。日付をまたぐ遅い就寝、消灯後の携帯電話やスマートフォン使用や深夜のバイトをはじめ、午前7時台以前の早い起床、週4日以上の朝練習などが睡眠を阻害する要因となっているという。

この知見は、アスリートのパフォーマンス向上にむけて、睡眠コンディショニングのカギとなる生活習慣、練習時間帯、競技ストレッサー、メンタルヘルスといった各局面での重要ポイントを明らかにしたもの。

日常的にハードなトレーニングを行うアスリートにとって、パフォーマンスを向上させるうえで、適切な休息や睡眠コンディショニングが不可欠。これまでの研究から、一般成人の睡眠障害については、生活習慣、ストレスを与える要因である「ストレッサー」、メンタルヘルスなどのリスク要因が明らかにされているが、アスリートの睡眠障害に関しては、ほとんど検討されてなかった。

アスリートの睡眠障害には競技活動の状況や競技に係るストレッサーなど特有の要因も推測されることから、武田教授らの研究では、学生アスリートに関するデータをもとに、睡眠障害の要因について生活習慣・競技活動・競技ストレッサー・メンタルヘルスを包括的にとりあげた初の実証検討を行った。

一昨年4月~11月に、5大学の体育系学部で1、2年生対象の授業を受講した1875名を対象に、無記名自記式 質問紙調査を実施した。質問紙を回収した1738名(回答率92.7%)のうち、運動部に所属している1、2年生で完全回答を得た906名のデータを解析した。

睡眠障害と生活習慣(就寝時刻、起床時刻、喫煙、飲酒、食事、アルバイト、消灯後の電子機器使用)、競技活動(週当たりの練習時間、週当たりの朝練習―午前9時以前の練習―と夜練習―午後9時以降の練習―の頻度)、競技ストレッサー、メンタルヘルスとの関連について、属性(年齢、性別、ボディマス指数(肥満度を表わす体格指数))を調整した多重ロジスティック回帰分析により検討した。

調査の結果、「就寝時刻」と「起床時刻」で、就寝時刻が午後11時以前の者と比べて午前1時以降の者および午前0時台の者、午前6時台の者、さらに午前7時台の者で、それぞれ睡眠障害のリスクが高いことがわかった。

また、「深夜時間帯(午後11時以降)のアルバイト」をしない者と比べて、している者も、睡眠障害のリスクが高くなっていた。さらに、「朝練習」をしない者と週4日以上している者と比較すると、週4日朝練をしている者も、睡眠障害のリスクが有意に高いことが明らかになった。

この研究では、学生アスリートのデータから、睡眠障害のリスク要因について生活習慣・競技活動・メンタルヘルスを含めて包括的に検討し、睡眠コンディショニングのカギとなるポイントを初めて明らかにしたもの。

今後、アスリートの睡眠障害の予防・改善に向けて、就寝・起床時刻の調整や消灯後のスマホ使用を控えるといった生活習慣面の対策に加え、朝を避けた練習時間帯の調整、競技に関する意欲喪失ストレッサーの低減や対処、メンタルヘルスの保持改善といった競技活動面での支援対策が望まれる。


株式会社官庁通信社
〒101-0041 東京都千代田区神田須田町2-13-14
--総務部--TEL 03-3251-5751 FAX 03-3251-5753
--編集部--TEL 03-3251-5755 FAX 03-3251-5754

Copyright 株式会社官庁通信社 All Rights Reserved.