2016年7月26日 水産業への被害の軽減に期待 赤潮の発生を早期検知できる技術を実用化

(国研)水産研究・教育機構では、これまでにDNAから感度良く有害赤潮プランクトンを検出する技術を確立してきた。今回、(株)ニッポンジーンとともに、その技術を発展させ、赤潮発生の早期検出技術の実用化のための共同研究開発を実施した。その結果、検出手順をマニュアル化するとともに、用いる試薬類などをキット化することで、「カレニア ミキモトイ」、「シャットネラ属」の赤潮原因プランクトンを簡単、迅速、正確に検出できるようにした。この検出キットは、赤潮プランクトンを発生のごく初期から高感度で検出することができる。これを用いて分析することで、種判別の高度な知識がなくても、海水10mL中に赤潮原因プランクトンが1細胞あれば検出することが可能。また、このキットを活用することで、早期に適切な対策を講じることが可能となり、赤潮による水産業への甚大な被害が軽減されることが期待されている。

 

養殖などの被害総額は年間数十億円

プランクトンの異常増殖で起こる赤潮の被害は毎年発生しており、ブリやカンパチ養殖などへの被害総額は年間数十億円にのぼることもある。赤潮の水産業への大きな被害を防ぐためには、赤潮原因プランクトンのモニタリングにより赤潮の発生を早期に把握し、生簀の移動や餌止めといった対策を講じることが肝心である。現在、モニタリングでは、主に顕微鏡観察によって有害種を判定し細胞密度を測定しているが、これには種判別のための高度な知識を必要とし、測定に時間がかかるなどの課題があった。そのため、作業にかかる負担軽減のために、養殖の現場から簡単、迅速、正確に赤潮発生状況を把握できる技術の開発が求められていた。

 

これまで確立してきた技術を発展

水産研究・教育機構では、これまでに、サーマルサイクラーなどの特殊な機材を必要としないLAMP法により有害赤潮原因プランクトンの検出技術を確立してきた。しかし、それを広く普及させるための実用化には至っていなかった。そこで、ニッポンジーンと共同して、この検出技術を発展させ、赤潮発生の早期検出技術の実用化に取り組むこととした。

共同開発研究では、温度や試料量などの測定条件の確認、プランクトンの回収方法、海水のLAMP反応への影響、DNA抽出方法やその試薬、目的とするDNAの検出判定試薬の選択など、キットに適した試薬の選択と配合が検討された。今回、それが実用化に至り、簡単、迅速、正確に有害種の「カレニア ミキモトイ」、「シャットネラ属」を検出できるキットが完成した。

 

迅速かつ簡単に正確な判定が可能

今回開発されたキットには、サンプル海水からDNAを抽出するための試薬や遺伝子の増幅開始などに必要な試薬、使用するチューブ類が全てそろえられている。マニュアルに従って操作を行い、10mLの海水から濾過・抽出したDNAに検査溶液を加えて62℃(カレニア ミキモトイ)、または66℃(シャットネラ属)で1時間保温し、UVライトを当てるだけで、迅速かつ簡単に正確な判定ができる。抽出物中に目的のプランクトンが1細胞以上あれば、反応液が緑色に発光し目視で判定できる。このため、最初のサンプル海水の量を調節することで、1Lあたり数細胞でも検出可能となる。漁業被害を起こす赤潮はプランクトンが1mLあたり数十から数百細胞になった状態なため、その100~1000分の1以下の低密度でも検出することができる。

 

被害軽減への貢献に大きな期待

このキットを養殖現場などのモニタリングに活用することで、種判別の高度な知識がなくても簡単、迅速、正確に赤潮の原因となるプランクトンを発生のごく初期から検出できるようになる。早期に適切な対策を講じることで、赤潮による養殖への被害の軽減に貢献することが期待される。


株式会社官庁通信社
〒101-0041 東京都千代田区神田須田町2-13-14
--総務部--TEL 03-3251-5751 FAX 03-3251-5753
--編集部--TEL 03-3251-5755 FAX 03-3251-5754

Copyright 株式会社官庁通信社 All Rights Reserved.